法務・税務 地面師が狙っている

地面師に「ダマされない」「狙われない」ポイントとは 松本万紀

市街地の「空き家」風の物件は地面師のターゲットになりやすい(砂肝大好き/PIXTA)
市街地の「空き家」風の物件は地面師のターゲットになりやすい(砂肝大好き/PIXTA)

 地面師犯罪(不動産取引を巡る詐欺事件)の検挙件数は、1982年までの警察白書に掲載されており、1981年の認知件数は1264件、検挙件数は1235件だった。それ以降も、数十件から数百件単位で発生していると推測され、近年も増加傾向にあるといわれている。正しい発生件数が分かりにくい理由は、不動産事業者が被害に遭うことが多いためでもあるようだ。「不動産のプロがダマされた」という汚名は信用問題にもつながるため、隠しているところも少なくないからだと聞く。

 近年の傾向として、偽造技術が格段に向上したことで手段が悪質・巧妙化するとともに、損害額も極めて大きくなっていることが挙げられる。2013年のアパホテル事件では12億6000万円、同年の東京都品川区で3億6000万円、茨城県日立市では7億円の被害が発生している。また、15年には東京都世田谷区で5億円、杉並区で2億5000万円、17年の積水ハウス事件では55億5900万円に及んでいる。高額な被害のみならず、数百万円から数千万円単位のライトな手付金詐欺も横行している。

 なぜ、そうした犯罪が可能なのか。また、防止対策がなぜ機能しないのか。地面師事件は単独での犯行はまずない。所有者になりすます者のほか、格好の物件を見つけ調査する「情報屋」、法制度を熟知した「法律屋」、買い主と交渉する「交渉役」、偽造書類を制作する「道具屋」、マネーロンダリングの担当者、シナリオを描き全体をまとめ上げるリーダー(「監督」)などが知られている。さらに、善意の第三者や内通者などまで登場する。さながら「詐欺の総合芸術」とでも呼びたくなるほど、実に多彩で巧妙だ。

司法書士が「最大の関門」

 これらの者たちが周到に準備を重ね、一団となってターゲットに襲いかかる。一方、普通の人であれば、高額な不動産取引をすることは人生で何度もないため、すっかりダマされてしまう。本物と見分けが…

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週刊エコノミスト

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