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名古屋市が「エスカレーター歩くか止まるか問題」を羞恥心に訴えて“解決” 横山和輝
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1990年代に自然発生したとみられる、片側を空けたエスカレーターの乗り方。転倒事故を防いだりするため、名古屋市が「ゲーム」のルールを変えた。
条例施行1年弱で“止まる”市民は45.4%に
名古屋市でエスカレーター上を歩行する人が大幅に減少している。2023年10月に「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が施行され、エスカレーターの右側か左側かを問わず「立ち止まらなければならない」として、エスカレーター利用時の歩行が禁止された。市の啓発活動だけでなく、AI(人工知能)を活用して音声で注意を呼び掛ける装置の導入などが効果を上げているようだ。
名古屋市によれば、昨年6~7月の調査ではエスカレーターを「歩いたり走ったりして利用」している人の割合は6.7%で、22年4~5月の調査時の21.3%に比べて大きく低下している。昨年9月に実施した市民2000人を対象にしたアンケート結果では、エスカレーターの右側に立ち止まって乗ることがあるかを尋ねた項目で、「ある」が全体の45.4%と前回調査(23年10月)に比べて13ポイント増加した。
広く知られているが、エスカレーターの乗り方には二つのローカルルールがある。それぞれを「東京式」と「大阪式」と呼んでおく。双方とも、エスカレーターの片側で立ち止まり、もう片方を別の利用者が歩けるようにする。東京式では左側で立ち止まり、大阪式では右側で立ち止まる。旅行や出張などで双方の違いに驚いた経験がある人も少なくないだろう。
名古屋は東京式であったが、右側で立ち止まる利用者に対して後ろまで歩いてきた利用者が抗議したり、筆者の右側で子どもが後ろから歩行してきた客に押されたりするなど、物騒な瞬間にしばしば遭遇した。名古屋市条例はエスカレーター上の転倒事故を防ぐとともに混雑緩和も目的として、東京式に順応した利用者に対して、歩かないように仕掛けたの…
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