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教養・歴史 自著で振り返る平成経済

既存の雇用システムからこぼれ落ちる現象が起きた=玄田有史

玄田有史・東京大学社会科学研究所教授
玄田有史・東京大学社会科学研究所教授

 新卒で就職し、正社員になれば将来は安泰という日本の雇用システムでうまくいった時代が終わりを迎えたのが平成だった。そのシステムからこぼれ落ちる現象がどんどん出てきた。

 僕が本を書いてきたのは、新しく起きている現象に「輪郭をつける」ことだった。「レッテル貼り」だと批判されることもある。それは職業的宿命だ。言葉がなければ現象は見えない。言語化し、類型化して初めて、対策を考えることができる。研究は時代にあらがえない。特に雇用に関しては、海外から持ってきた概念を日本に当てはめて分析するだけではなく、今起きている問題をまず発見しなければならないと思った。

 何か解決策をすぐに提示するわけではないことも批判される。だが、データから分かることは限られる。「ここまでは言えそうで、ここから先は分からない」と分かるぐらいだ。「政策はこうすべきだ」なんて軽々しく言えない。

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