施設不足のうそ 介護市場の不幸なミスマッチ 過剰な施設と深刻な担い手不足=長岡美代
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特別養護老人ホーム(特養)など、要介護者を受け入れる施設が政令指定都市や中核市で過剰となる事例が目立つ一方で、現場の担い手である介護人材の不足が深刻化し、介護サービスを円滑に進めるための「車の両輪」が空回りしている。
『日本経済新聞』は昨年12月、首都圏だけで特養のベッドが約6000人分も空いているという調査結果を明らかにした。特養の入居待機者は全国約30万人に上り、団塊世代の介護ニーズが高まる「2025年問題」への対応も迫られ、老人ホームの需要拡大が見込まれるにもかかわらず、なぜこのような事態が起きているのか。
原因の一つに政府による拙速な市場の拡大がある。入居待機者の解消を旗印に、公的な社会福祉法人が運営する特養を増やすとともに、民間による有料老人ホームの開設が相次いだことに加えて、見守りなどのサービスが付いた高齢者向け住宅(サ高住)の建設費にも国費を投入して民間参入を喚起した結果、各地で施設が飽和状態になっているのだ。
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週刊エコノミスト
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