インタビュー 辻哲夫 東京大学高齢社会総合研究機構特任教授 在宅介護支援は「内なる国防」
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これからは、一人暮らしが中心の超高齢社会となる。子供たちが介護の負担を恐れ、親とのかかわりさえ避ける国になってしまわないよう、在宅を基本とする介護支援システムを普及させなければ、内から人倫の基本が乱れかねない。在宅介護支援は「内なる国防」ともいえる。
今後の超高齢化の過程で、必要な社会保障のために段階的な増税は不可欠だが、需要を正しく抑制するため、加齢によって心身が弱る「フレイル」の予防が大切だ。できる限り、最期まで口から食べられるようにし、施設でなくて住み慣れた家でなれ親しんだ生活を繰り返す。それを支援するのがベストケアだ。認知症の一人暮らしには、小規模多機能型居宅介護が有効だ。症状が進んだら介護の定期巡回をして、病気がちになったら在宅医療と訪問看護でみとりまで可能とする。
施設では、経済的弱者は望む所に住み替えができないという問題がある。地域そのものを「屋根のない特養(特別養護老人ホーム)」にしてしまえば、誰もが住み続けられる。テクノロジーを併用すればできるはずだ。健康寿命を延ばしつつ、最期まで誰もが安心して心豊かに死を迎えられる社会を作る。そこにはお金をかける、という価値観が必要だ。
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週刊エコノミスト
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