ラガルド新総裁待ち受けるECBの「三つの試練」=鈴木敏之
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11月1日、国際通貨基金(IMF)専務理事を務めていたクリスティーヌ・ラガルド氏が第4代の欧州中央銀行(ECB)総裁に就任した。その前途は厳しい。ラガルド氏を「三つの試練」が待ち受けているからだ。
第一は欧州経済の状態が悪いことである。今の欧州景気の悪化は「キチンサイクル」(約40カ月の景気サイクル)によるという見方もでき、近く下げ止まるという楽観論も根強い。しかし、ユーロ圏全体の経済状態を表す「ユーロコイン指数」でみると悪化が止まっていない(図1)。世界金融危機後、欧州はまたも他の主要経済圏よりも重い落ち込みになろうとしている。この経済下降の要因としてラガルド氏は通商問題の影響を重視している。さらにサプライチェーンの分断が危惧される英国の欧州連合(EU)離脱の問題がある。中東の不安定化も難民流入の問題になる。いずれも景気回復の足かせとなる。
経済成長率以上に悩ましいのがインフレ率の低さである。ECBは2%に近いが2%を下回ることを目標にしている。ところがECBの直近の経済見通しでは、インフレ率は2019年1.2%、20年1%、21年1.5%とみている。公式統計で1%というのは、インフレ指数の上方バイアスを勘案するとデフレの縁といってよい。ラガルド総裁はこの困難に対処しなければならない。
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週刊エコノミスト
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