テクノロジーAIチップで沸騰! 半導体

INTERVIEW 松岡聡(理化学研究所計算科学研究センター長) スパコン「富岳」のすごさ

    松岡聡氏
    松岡聡氏

     半導体の最新技術の集大成であるスーパーコンピューター。世界トップの性能を誇り昨年8月に運用を終えた「京」の後継機として2021年ごろの稼働を目指す「富岳」の開発リーダー、理化学研究所の松岡聡・計算科学研究センター長に開発の意義や半導体産業への影響を聞いた。

    (聞き手=岡田英・編集部)

    松岡 試作機には、計算機能を担う富士通の高性能CPU(中央演算処理装置)「A64FX」を768個使っている。富岳では15万個搭載する。このCPUの計算性能は、「京(けい)」のCPUの約20倍。スパコンに使われる米インテルの高性能CPUと比べても、電力効率が3倍良い。世界中で使われている英ARM(アーム)社の仕様を基に設計され、必要なら市販ソフトの「ワード」や「パワーポイント」も動くほど汎用(はんよう)性が高い。富士通は今年3月からこのCPUを搭載した商用版スパコンを出荷する。

    松岡 クラウド(インターネット上のデータセンター)の事業者から非常に注目され、引き合いも多いそうだ。これとは別に、米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)傘下のスパコン会社米クレイが、富岳のCPUを搭載したスパコンを開発し、米エネルギー省(DOE)下のロスアラモス国立研究所やオークリッジ国立研究所などに納入する。米国の政府機関が、日本製CPUを使ったスパコンを買うのは歴史上初めてだ。日本から世界に冠たるCPUが生まれ、買われ始めているわけで、日本の半導体産業の復興につながる。

    松岡 スパコンは、計算するためにデータをメモリーから呼び出すが、そのデータ転送の遅さが高速化を妨げる一因だった。米国ではCPUに加え、データ転送を高速化する画像処理半導体(GPU)を併用する手法が主流。これに対し、富岳はCPUだけで構成し、GPUが持つデータ転送の加速機能をCPU内に取り入れた。ただ、CPUの汎用性とデータ転送能力向上はトレードオフ(相反)の関係にあり、両立はとても難しい。スパコンや人工知能(AI)の学習向けに特化してデータ転送能力を高めるよう工夫し格段に性能が高いCPUになった。

    松岡 昔のスパコン開発では汎用性を犠牲に…

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