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「おしゃれで知的でリベラルな国」フランスがアフリカでやらかしている「ゲスの極み植民地経営」の恐るべき実体(立沢賢一)

パリのエッフェル塔のイルミネーション=2013年12月14日、宮川裕章撮影
パリのエッフェル塔のイルミネーション=2013年12月14日、宮川裕章撮影

CFAフランの何が問題なのか

① 欧州連合(EU)の共通通貨ユーロが1999年から流通を開始したことで、CFAフランの交換レートはユーロの固定相場制で1ユーロ = 655.957CFAフランと定められており、フランスが決定し管理しています。

ここで問題なのはCFAフランの交換レートが非常にCFAフラン高の水準で固定されてしまっていることです。

CFAフランを使用している多くのアフリカの国々はその豊富な天然資源を輸出していますが、CFAフランが高く設定されていると価格競争力が弱まってしまいます。

日本で円高になると輸出企業がダメージを受けるのと同じ理屈です。

CFAフランの通貨価値は本来ならアフリカ側の経済状況を考慮もしくは反映して決まるべきです。

ところが、CFAフランはユーロと固定されていますから、ユーロ高になればCFAフランも高くなるため、CFAフランを使用する国々は輸出が低迷し、産業化も進捗せず、経済成長の妨げになってしまうのです。

② 中央銀行が保有する資産の50%をフランス国庫に預けなければならないという現制度は、本来、アフリカの経済振興に使うべき資産をフランスに召し上げられてしまっていることを意味します。

アフリカの経済活動で得られる、年間約5000億ドル(約54兆円) 以上もの資金がフランス国庫に献上されているということです。

これに関して、フランスはアフリカを失うと経済力が第三世界レベルにまで下落すると以前シラク大統領が言及したことからも窺えます。

因みに、残りの50%は2つのフラン圏の中央銀行(BCEAOとBCEAC)で管理されます。

③ 西アフリカ中央銀行(BCEAO)の役員会には2名のフランス人役員が常駐していて、しかも満場一致でなければ意思決定ができないルールになっていますから、フランスが加盟国の金融をフランスが実質的に支配していることを示唆しています。

アフリカ各国が通貨主権を獲得する為にすべき事

アフリカでは1975年にベナン、ブルキナファソ、カボベルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴの15カ国が加盟する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が設立されました。

会談を前に、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)議長のコナレ・マリ大統領(左)、オバサンジョ・ナイジェリア大統領(右)と握手する森首相=2001年、ナイジェリア・アブジャの大統領府(共同)
会談を前に、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)議長のコナレ・マリ大統領(左)、オバサンジョ・ナイジェリア大統領(右)と握手する森首相=2001年、ナイジェリア・アブジャの大統領府(共同)

2019年6月29日、ナイジェリアの首都アブジャでECOWASの首脳会議が行われ、2020年までに共通通貨の導入を目指すことで合意し、その共通通貨の名称を「ECO」にすると決定しました。

ECOWAS加盟国中、セネガル、マリ、コートジボワール、ニジェール、ブルキナファソ、ベナン、トーゴ、ギニアビサウの8か国がユーロと連動する通貨CFAフランを用いており、ナイジェリアなど7か国が交換性のない独自通貨を使用していますが、加盟国間の越境貿易や経済発展の促進策として約30年間かけて検討されてきた初めての通貨統合が実現する方向性がこの日に確認されたのです。

アフリカ各国はCFAフラン圏を超克し、CFAフランを廃止すること以外、通貨主権を獲得する方法はなく、その場合は現在まで続くフランスへの従属、いや隷属状態から今後も逃れられないと言っても過言ではありません。

ECOWASで検討された新「ECO」の最大の特徴は、新「ECO」がユーロと固定せず変動相場制を採用することだと思います。

それにより、アフリカ諸国間での①取引費用が削減され、②域内で貿易が促進され、③海外援助、④市場の拡大、⑤通貨主権の取得を目標と出来るのです。

既得権喪失を懸念したフランスの行動

フランスはECOWASの経済的中心国であるナイジェリアが域内総生産の3分の2を占めている不均衡な状況を鑑み、ナイジェリアが新「ECO」を通して、将来、アフリカ域内金融政策を支配するのではないかと懸念しました。

また、ナイジェリアは2050年には人口が5億人になると予測されており、その規模はフランスがアフリカを支配する上での脅威となります。

フランスは既得権を失うリスクを回避する為に、ナイジェリア が地域の覇権国家になる前にその芽を摘む必要がありました。(ここでは触れませんが、ボコ・ハラムというナイジェリアのテロリストを背後でフランスが支援していると言われていますが、それはナイジェリアの国政を混乱させるのが目的と言えます)

そこで、フランスは西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)の親仏国と裏で手を組み新「ECO」の乗っ取りを画策しました。

そして、コートジボワールのアラサン・ワタラ大統領は2019年12月21日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領との共同記者会見で、西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)の共通通貨であるCFAフランの廃止と、フランス版新「ECO」の導入を正式発表しました。

新「ECO」導入に当たって3つの具体的な決定が示されました。

① 西アフリカ諸国中央銀行(BCEAO)が、外貨準備のための預金の50%をフランス国庫に預託する制度の廃止。それでも、フランス政府は、BCEAOが外貨準備のための資金不足に直面したときには必要額を供与すると述べています。

② BCEAOからフランス代表が撤退。従来は、UEMOAにおいて中央銀行の役割を果たしているBCEAOの理事会、および金融政策委員会にフランス代表を派遣していましたが、これらの派遣制度が廃止されることになりました。

③ 従来のユーロとCFAフランの固定相場制(1ユーロ=655.96CFAフラン)はインフレリスクを回避するため、ECO導入後も継続されるということです。

新「ECO」は元々ECOWASで長期間、検討されてきた「ECO」とは内容が異なるもので、それはあたかもフランスが「ECO」という名称を泥棒したとさえ言えます。

フランスによるこうした切り崩し工作を受けて、英語圏のナイジェリアなど6カ国からなる西アフリカ通貨圏(the West African Monetary Zone:WAMZ)加盟国は2020年1月16日、ナイジェリアの首都アブジャで臨時会合を開催し、英語圏6カ国も加盟している西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が導入を目指すフランス版新「ECO」の導入を見送ることを決定しました。

1975年にECOWASを設立し、安定した通貨体制を作ることでアフリカ人は長年の夢であった金融主権をフランスから奪回しようとしましたが、実際には、フランスに都合の良い「フランス版ECO」が導入されてしまい、結果的に、アフリカに於けるフランスの通貨帝国主義はまだまだ続くことになりました。

アフリカで親仏大統領が多い訳

過去にフランスの通貨主権を妨げようとした多くの独立系の国々のリーダーは殺害された経緯があります。

例えば、リビアのカダフィー大佐はアフリカ全体の共通通貨ディナールを導入しようと計画しましたが、その後NATO軍による軍事介入によって殺害されました。一説にはフランスの情報機関による犯行だとも言われています。

OAU(アフリカ統一機構)首脳会議の会場に姿を見せたムアマル・アル・カダフィ大佐(中央) 2001年
OAU(アフリカ統一機構)首脳会議の会場に姿を見せたムアマル・アル・カダフィ大佐(中央) 2001年

マリフランを導入しようとしたマリ初代大統領も獄中で不審死を遂げました。

50年間にアフリカ26 カ国で発生した67件のクーデターはフランスが背後で操っていたとも言われています。

コートジボワールの現大統領のように親仏派(?)の大統領達は反フランス的行動に走った暁に暗殺されることを恐れ、否応なしにフランスの飼い犬のように振舞っているのかも知れません。

フランスにとっての新たな脅威

このようにフランスはアフリカの既得権益をいまだ手放してはおらず、時代錯誤とすら思えるほどの植民地支配を、新植民地主義の名の下で継承しつづけています。

また最近では後発組のアメリカもフランスの動きを牽制しながら地下資源利益を奪取するためにアフリカに入ってきています。

そのような中で、最大の懸案となってきているのが中国の動向です。

中国は既に多額の資金をアフリカ大陸に投資しており、それはあたかも近い将来にはフランスとの資源奪取戦争へ突入する可能性すら視野に入れているかのようです。

過去10年間にアフリカ大陸の国々へ入国した中国人の数は過去400年でヨーロッパ人のその数をすでに上回っているといるデータがあります。

フランスやアメリカはこれまでフランスに従順であったアフリカの国々が中国になびいており、最終的に現行のユーロではなく、中国人民元が先述したアフリカの新共通通貨「エコ」と固定するのではないかと危惧しています。

中国が日本円換算で数千億円から数兆円の各種プロジェクトに着手することにより、アフリカの国々を手懐ければ、人民元を域内決済通貨として使う可能性は高まるのです。

ガーナは近年中国資本が急激に注入されており国内では反CFAフランの動きが活発化しています。それは背後で中国が操っていると言われています。

それはまさにフランスと中国との水面下通貨戦争の前哨戦とも言えるでしょう。

2018年9月には親仏であるコートジボアールのワタラ大統領は中国企業に対し、コートジボワールの投資環境をアピールし、特に高いポテンシャルを有する農業、鉱業、一次産品加工、金融分野を中心に投資を呼び掛けました。

最近ではコートジボアールのインフラ建設案件は、フランス企業ではなく中国企業が大半を落札している状況です。

米国ジョンホプキンス大学のデータに寄りますと、中国からコートジボアールへの融資総額は2010-2015年までの5年間で1400%増となっています。また同時期、セネガルは1268%増です。

アフリカ人は長年、欧州列強の植民地支配にうんざりしており、これまで植民地経験のない中国に無防備になっているのは否めません。

ジブチでも中国は150億ドル余りをインフラ整備に投資しており、外債の82%を保有しています。

それは最終的に、債務の罠として黄海やスエズ運河の支配権を中国に譲渡する事にもなり得るのです。

実際に、アフリカの債務総額の14%を中国が保有していることから鑑みれば、近未来において中国のアフリカ実質支配の可能性は充分にありえます。

アフリカは有望な投資先になり得るのか

アフリカが経済成長するには資源を生かすための高い技術開発や労働市場の効率化、将来の発展の為の高い子女教育が必要となります。

科学技術やビジネスの高度化、イノベーションのためには投資が重要であり、海外からのパートナーシップは不可欠となります。

これらを実現するため、アフリカの国々の政府指導者は外交や企業誘致などを強く意識し、企業もその意識に呼応するように積極的に努力することが必要です。

もちろん腐敗政治の撲滅や治安改善、インフラ整備など課題はまだまだ山積していますが、それらを克服することが必須条件となるのです。

アフリカ大陸の致命的な問題は、資源の宝庫ではあるものの、フランス、アメリカや中国が利権の奪い合いを目的とした熾烈な戦いを繰り広げていることです。しかもその戦いが激化するリスクが年々高まり続けていて、流血沙汰こそないものの、今後も資源獲得戦争の戦場になり続ける運命にあるということです。

それ故に、一般投資家がアフリカに投資するのは先進国や東南アジア諸国で不動産案件に投資するのとは次元が全く異なります。

アフリカ大陸が投資の最後のフロンティアとなるには長期間の年月が必要なのは言うまでもありません。

立沢賢一(たつざわ・けんいち)

元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。

Youtube https://www.youtube.com/channel/UCgflC7hIggSJnEZH4FMTxGQ/

投資家サロン https://www.kenichi-tatsuzawa.com/neic

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