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アフリカ諸国がいつまでも「世界最貧国」であり続ける理由と、ヨーロッパ諸国が今なおアフリカに強要する「新植民地主義」について(立沢賢一)

ウガンダの首都カンパラ市内にあるファーウェイのオフィス=2019年11月27日午後5時10分、小泉大士撮影
ウガンダの首都カンパラ市内にあるファーウェイのオフィス=2019年11月27日午後5時10分、小泉大士撮影

アフリカ投資は投資家にとって最後のフロンティアとなるのか?

アフリカは「人類最後のフロンティア」と呼ばれています。

私達日本人にとって、アフリカのイメージとは、「遠いなー」「何となく怖いなー」とか「映画ライオンキングのようなサファリや砂漠が広がる別世界だろうなー」といった程度のものでしょう。

アフリカ大陸の面積は日本のおよそ80倍。世界の大陸のおよそ5分の1の面積に、54か国が集中しています。

人口は12億4700万人以上で世界人口の17%もあるにも拘らず、世界総GDPの僅か3%程度に過ぎない経済力です。

資源は豊富で、石油、石炭、鉄鉱石、天然ガス、ウラン、セシウム、ダイヤモンド、金、銀、銅、スズ、亜鉛、鉛、タングステン、タンタル、ニッケル、チタン、コバルト、プラチナ、セレン、ボーキサイト、クロム、リチウム、マンガン、バナジウム、レアアースが埋蔵されています。

豊富な資源保有アフリカ大陸が最貧国を多く抱えている理由

2019年6月時点で、世界最貧国47カ国の内、アフリカの国が33か国も占めています。

それは,世界最貧国全体の70%超がアフリカ諸国であり、逆にアフリカ全体の内61%強の国が最貧国である計算になります。

なぜアフリカ諸国が最貧国であり続けるのでしょうか。

その理由として、次のようなことがあげられます。

(1) 天然資源は腐敗した政権の利権構造に組み込まれている 

(2) 天然資源は反政府軍や外国軍の収奪の対象となるなど、内戦や紛争のきっかけとなっている。紛争の背景には、政府が資源を適正に開発し利益を国民に分配するということをしていないこと。

例えば、スーダンでは2005年まで天然資源をめぐる内戦が22年続きましたが、これはアフリカ最長であり死者190万人にも及ぶ最悪の内戦とも言われているのです。

内戦が終わった後も経済情勢の悪化とインフラ整備の遅れが原因となって、2018年には全国で抗議デモが増加しました。

しかし、こうしたことが生まれる最大の理由とは、以下に述べますように、大国によるアフリカ支配が今もなお続いていることだと言って良いでしょう。

欧州列強によるアフリカ支配の構造「新植民地主義」とは何か

さて、1912年時点でのアフリカは、エチオピアとリベリアの2国を除き、54カ国中 52カ国が 7カ国の欧州列強により分割されていました。

▶︎イギリス:エジプト・スーダン・南アフリカ・ザンビア・ジンバブエ・ケニア・ナイジェリア・ゴールドコースト(後のガーナ)・ウガンダ・ソマリランド・シエラレオネ・ガンビア・ボツワナ・マラウイ・レソト・エスワティニ・モーリシャス・セーシェル

▶︎フランス:アルジェリア・チュニジア・モロッコ・ジブチ・マダガスカル

▶︎フランス領赤道アフリカ → コンゴ共和国、ガボン、中央アフリカ、チャド

▶︎フランス領西アフリカ → セネガル、ギニア、コートジボアール、ベナン、マリ、モーリタニア、ブルキナファソ、ニジェール

▶︎ドイツ:ドイツ領東アフリカ(タンザニア・ルワンダ・ブルンジ)・カメルーン・トーゴ・南西アフリカ(ナミビア)

▶︎ベルギー:コンゴ民主共和国

▶︎イタリア:リビア(トリポリ・キレナイカ)・ソマリア・エリトリア

▶︎スペイン:イフニ・西サハラ・赤道ギニア

▶︎ポルトガル:アンゴラ・モザンピーク・ギニアビサウ 

▶︎独立国:リベリア(米国の保護国)・エチオピア

Wikipediaより
Wikipediaより

アフリカでは第2次大戦後に独立した旧植民地に対して,欧米大国が採用している新しい型の支配政策として新植民地主義という概念が導入されました。

特に1950年代後半からアフリカ諸国の指導者たちは、欧州大国の経済援助・軍事同盟・傀儡政権樹立などによる植民地主義的支配体制の復活・維持を受け入れてきたのです。

この新植民地主義のためのツールとなったのがIMFや世界銀行などの国際機関でした。

インフラ建設のためにアフリカ諸国はこうした機関の資金を借り入れましたが、返済できなくなるとIMFから構造調整プランという厳しい返済計画を強要され、緊縮財政と税の引き上げ、社会保障の減額を余儀なくされることになります。

新植民地主義が植民地主義の継承に過ぎないと主張する人達は、今日のアフリカがIMFや世界銀行から借りた時よりも遥かに多くの金額を返済するために、国民が必需品すら買えない困窮状態に追い込んでしまっていることを指摘しています。

事実、IMFや世界銀行から福祉や教育、社会基盤の民営化を柱とする構造調整プランを押し付けられたことで、アフリカ諸国では国民の生活水準の低下が顕著に見られるようになりました。

後に説明しますが、中国がアフリカ諸国へ提供した資金による「債務の罠」の問題と類似の構造が、IMFや世界銀行を通じた新植民地主義政策に見られるのです。

実に過酷なフランスの新植民地主義政策

フランスは1945年にCFA(セイファフラン)という当時のアフリカにおけるフランス植民地での共通通貨を導入することで新植民地主義を実行し始めました。

CFAフランはアフリカ人口の14%に相当する1550万人が利用し、アフリカ全GDPの12%に影響を与えています。

アフリカ諸国は1950年代にフランスから独立した後、現在でもアフリカ諸国の経済的必要性とは無関係にCFAフランは使用されているのです。

驚くことに、1948年10月に1 CFAフラン=2 フランス・フラン(以下FF)に固定されて以来、70年のあいだに、金・ドル本位制とも言えるブレトンウッズ体制が崩壊し、フレンチフランが消滅してユーロが誕生し、世界の金融市場が大きく様変わりしたにも拘らず、CFA交換レートは1994年1月12日にCFAフランを50%切り下げた時の一度しか見直されていないのです。

CFAフランとは一体どういうものか

CFAフランには西アフリカ中央銀行(BCEAO)発行のものと中部アフリカ諸国銀行(BEAC)発行のものの2種類あり、

① 西アフリカでは、西アフリカ諸国中央銀行傘下にセネガル、マリ(118位)、コートジボワール(89位)、ニジェール(143位)、ブルキナファソ(128位)、ベナン(126位)、トーゴ(150位)、ギニアビサウ(175位)の8カ国、

② 中部アフリカでは、中部アフリカ諸国中央銀行傘下にカメルーン(96位)、チャド(140位)、中央アフリカ(166位)、ガボン(119位)、コンゴ(138位)、赤道ギニア(129位)の6カ国、(括弧内名目GDP世界順位)

①と②あわせて、合計14カ国となります。

フランスによる統治政策の一環としてCFAフランを相互に使用することはできません。

CFAフランの特徴

CFAフランには次のような特徴があります。

① CFAフランを発行している西アフリカ諸国中央銀行(Banque Centrale des Etats de l'Afrique de l'Ouest : BCEAO)が保有する外貨準備の一定割合(当初100%、1973年に65%、2005年以降50%)をフランス国庫に預けるように義務付けられています。

② BCEAOが保有する外貨準備をその短期負債(主に発行した銀行券)の2割以上にすること等を条件に、フランスが無制限にCFAフランの通貨価値を保証していることです。

CFAフラン肯定派はCFAフラン圏諸国の経済は安定し、インフレ率は低く保たれてきたと言及しています。

ですが、CFAフラン否定派は身の丈に合っていない強い通貨がUEMOA地域の競争力を弱め、経済成長を阻害しており、経済的なフランスへの依存からアフリカ諸国が抜け出せない理由とは、CFAフランによって仕組まれた構造であると批判しています。

立沢賢一(たつざわ・けんいち)

元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。

Youtube https://www.youtube.com/channel/UCgflC7hIggSJnEZH4FMTxGQ/

投資家サロン https://www.kenichi-tatsuzawa.com/neic

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