金融緩和で続く中国の不動産バブル、破裂なら金融危機も=齋藤尚登
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金融緩和で不動産バブル 過度なローンで消費抑制も=斎藤尚登
「ブラックスワン」が事前の予測が困難で、発生した場合に甚大な影響をもたらす事象であるのに対して、「グレーリノ(灰色のサイ)」は深刻な影響をもたらす可能性が高いにもかかわらず、軽視されているリスクを示す。中国銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席は、中国の「灰色のサイ」は不動産バブルであるとした。同氏は、かつて辣腕首相として名を馳せた朱鎔基氏を支えた四天王の一人で、高い改革意識を持つとされるだけに、その言葉は重い。同氏は、不動産市場が抱える潜在的なリスクをもっと警戒すべきと主張したのだ。
中国の不動産市場には問題が山積している。主なものは、①地方の財政収入が、土地使用権の売却収入への依存度が高く、地方政府にとって不動産価格(使用権売却価格)は上昇することが望ましく、価格安定への動機が働きにくいこと、②このため、住宅価格は上昇傾向が強く、居住目的以外の投資・投機目的の所有も多いこと、③居住目的の家計にとって、特に大都市圏では住宅は高根の花となり、過度な住宅ローン負担が消費の抑制要因となっていること、④住宅ローンに加え、不動産開発業者向けの貸し出しなど、金融機関の不動産関連のエクスポージャーが大きく拡大し、仮に住宅価格が長期に低迷した場合は、不良債権の急増が懸念されること──などがある。
急増する住宅ローン
例えば、給与総額と個人住宅ローン残高の推移を見ると(図1)、2015年以降は住宅ローン残高が急増しており、ローン負担が家計に重くのしかかっている可能性が高い。賃貸価格の上昇により、家賃負担も増大していよう。
家計債務残高の増大は、住宅価格の急速な下落のようなショックが起きた場合に、金融危機の下地となり得るだけに注意が必要だ。家計債務残高のGDP比について、過去に不動産バブルが発生・崩壊した国と中国を比較すると(図2)、20…
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週刊エコノミスト
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