「所有権重視しすぎ」が土地円滑利用の妨げに=野田毅
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インタビュー 野田毅 「所有権重視しすぎ」が土地の円滑利用の妨げに
野田毅 自民党「所有者不明土地等に関する特別委員会」委員長
所有者不明土地関連法には、自民党の関係委員会がまとめた「相続登記の義務化」「遺産分割の制限」といった主張が反映された。議論をけん引した野田毅氏に、課題意識を聞いた。
(聞き手=種市房子・編集部)
── 所有者不明土地問題に課題意識を持ったのはいつごろからか。
■30年ほど前からだ。地元で農業用地整備や河川の改修工事をしようと思っても、地権者が数十人にも及び、工事が進まない事例が相次いだ。用地の中には、墓地や集落の共有地が含まれるケースもよくある。元々の共有者が多数であったところに、2次相続が発生したまま相続登記もされず、相続人である地権者が枝葉のように増えてしまう。
同意取りにハワイまで
── 実害はあったのか。
■農業用地整備で地権者がハワイにいることが分かり、事業主体の関係者が同意をもらうために現地までハンコをもらいに行ったケースもあった。地権者の所在を把握しきれず断念した事業もある。何とかしなければ、と考え続けていたところに、東日本大震災が起きて、一気に問題が世間に知られるようになった。復旧・復興事業を進めるために、一筆ずつ地権者数十人の同意を取っていると大変な作業になり、復興の遅れにつながると強い危機感を抱いた。
── 所有者不明土地問題は地方だけの問題なのか。
■東京・六本木の大規模再開発では、デベロッパーから「一筆の土地に、数十人の同意を取り付ける必要があった」と聞いた。この事案も、元々の地権者から2次相続、3次相続が発生した結果だろう。現行法が、所有権を重視しすぎることが円滑な土地利用を妨げているのではないか。
── その課題意識をどのように政策に反映したか。
■震災以降、官邸や法務省へ関連の政策提言をし、議論を重ねた。その結果は、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」施行にもつながった。公共事業や地域の福利事業に土地を使う場合、所在不明者らがいても土地利用手続きを円滑化する仕組みを盛り込んだ。所有者不明土地問題に取り組めば、公共事業、災…
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週刊エコノミスト
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