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法務・税務 変わる相続・登記・民法

「3年以内に相続登記しないと過料10万円」の現実味とは?=横山宗祐

不動産登記は、原則として土地・建物を管轄する法務局に申請
不動産登記は、原則として土地・建物を管轄する法務局に申請

相続1 土地・建物…うっかりで大損!? 登記しないと金銭的制裁も=横山宗祐

登記しないと金銭的制裁も 「知ってから3年」に要注意

 これまで不動産登記は、所有権を取得した者がその権利を守るために申請を行うのであり、法律上の申請義務はなかった。しかし、今年4月28日に公布された改正不動産登記法には、「相続登記の義務」が明記された。

 改正法では、相続により不動産を取得した者は、自身が関係する相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したという事実を知った日から3年以内に登記申請をすることを義務化した。未登記のまま長期間放置すると過料が発生するため、注意が必要だ。改正法は原則として公布から2年以内に施行される。

 今回の法改正の背景には、所有者不明土地が増えていることがある。2017年の国土交通省の調査によると、不動産登記簿を見ても所有者が誰であるかすぐには分からない土地や、土地所有者は判明するが、所在が分からず連絡がつかない土地(所有者不明土地)が全体の22%も占めることが判明した。さらに、所有者不明土地の発生原因の66%が、相続登記の未了であることも分かった。相続登記の未了をこれ以上発生させないための改正といえる。

 まず、注意したいのは「相続開始から3年」ではないことだ。疎遠になっていた親族が死去して数カ月が経過してから、自身が不動産の相続人であることを知った場合には、その日から3年以内に登記申請すればよい。当初は遺産があることを知らなかった場合にも、遺産の存在を知った日から3年以内に登記申請すればよい。

 また、改正法では、後述するように、相続登記を促すために、従来手続きを簡素化した「相続人申告登記制度」が創設された。では相続登記義務化と手続き簡素化は、実務上どのような影響を与えるのだろうか。

想定ケース

 夫が死去後、妻Aと子Bで相続。相続発生から2年が経過したが、自宅の土地・建物と預貯金を含んだ相続財産全体の遺産分割がまとまるまで数年はかかりそうだ。

 相続人であるAとBは、いずれも自宅の相続登記を申請すべき義務を負う。ただし、遺産分割が終わっていないことから、夫の死去後3年以内に、法定相続分での相続登記、もしくは、後述する相続人申告登記の申し出を行うことになる。法定相続によれば、Aは2分の1、Bは2分の1ずつの持ち分を取得する。

 Aが相続登記を申請する場合、Aの法定相続分である2分の1のみの登記申請を行うのではなく、被相続人である夫の権利全部について、法定相続分に応じた登記がなされるよう手続きを進める必要がある。したがって、AかBどちらかが一括して、2分の1ずつ相続した旨の登記をすることになる。遺産分割が終わっていなくても、登記義務は生じるのだ。

「相続により不動産の所有権を取得する」とは、遺産分割や法定相続のケースだけでなく、遺言書に基づく相続にも適用されることには注意が必要だ。具体的には、遺言書に特定の財産を相続させる「特定財産承継遺言」が記載されているケースや、特定の相続人に遺贈するとの記載がある場合だ。

更正登記の活用も

 では、その後、遺産分割が成…

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