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敵か味方か、インテルとTSMCの複雑すぎる関係
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TSMC超えの大見えを切ったインテルが直面する厳しい現実=服部毅
米インテルは、設計から製造まで一貫して行う垂直統合型半導体メーカー(IDM)だが、パット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)の就任1カ月後の今年3月、IDMの形態をさらに進化させた新しいビジネスモデルである「IDM2・0」への移行を宣言した。
この宣言では次の三つの方針を示した。(1)インテル社内でプロセッサー製造を継続するとともに、新工場を建設し生産能力を増やす、(2)しかし、同時に他社への製造委託を従来よりもはるかに増加させる、(3)さらには、世界中の顧客を対象に生産受託する「インテル・ファウンドリー・サービス(IFS)」を独立事業として始める──の3点である。
インテルは、長期にわたり半導体の微細化開発につまずいており、内部の体制を立て直しつつ外部に新製品の製造を委託するという(1)、(2)は想定内の発表だった。しかし、(3)は誰も予想しえなかった唐突な発表で、台湾TSMCや韓国サムスン電子などのファウンドリー(製造受託)メーカーは、インテルを突然敵に回すことになり、困惑が一時広がった。
インテルは今年7月、新型GPU(画像処理回路)2品種をTSMCに5~6ナノメートル(ナノは10億分の1)プロセスで製造委託したと発表した。TSMCが22年に世界初の3ナノのプロセスを立ち上げ次第、インテルはすでに予約済みの米アップルをさしおいて、サーバー用先端CPU(中央演算処理装置)の製造を委託し、TSMC最大の顧客になる可能性があると台湾業界筋は見ている。
その一方で、インテルは米アリゾナ州に200億ドルを投じてファウンドリー用工場を2棟建設するほか、欧州にも建設することを検討中であり、候補地はドイツが有力だ。さらに、インテルは米国唯一の大手ファウンドリーであるグローバルファウンドリーズの買収交渉を進めているとも伝えられている。製造受託事業のノウハウを吸収するとともに顧客を引き継いで、新事業の早期立ち上げを狙っているようだ。
日本進出に現実味
ファウンドリー事業でインテルとの競争を余儀なくされたTSMCは、製造…
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