楽天の仮想化技術に立ちはだかるこれだけの壁
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仮想化技術を輸出する楽天に立ちはだかるいくつもの壁=佐野正弘
楽天モバイルを通じて「第4のキャリア」として携帯電話事業に参入した楽天グループが、汎用(はんよう)のサーバーとソフトウエアで実現する「仮想化」と呼ばれる通信技術の海外展開を進めている。8月4日には、同社のネットワーク技術をドイツの携帯電話会社である「1&1」に輸出することを明らかにした。ただ、仮想化ネットワーク技術の販売には多くの壁も存在する。
仮想化技術を全面的に採用した楽天モバイルの「完全仮想化ネットワーク」は、大手通信機器メーカーの高価な通信専用機器を使用せず、汎用サーバーでネットワークを構築できるのが最大のメリットだ。これにより、従来のネットワーク構築に比べて設備投資を4割、メンテナンス費用を3割程度、それぞれ抑えることができるという。
同社はこの完全仮想化ネットワークを、自社利用だけでなく、プラットフォーム化して他社に販売することを目指してきた。今回発表された1&1は、この技術を全面的に輸出する初の大型顧客で、楽天グループは今後10年間にわたって1&1に完全仮想化ネットワークを提供し、同社の携帯電話網の構築を進めていくとしている。
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、8月11日に開かれた2021年6月中間決算の説明会で、モバイル事業の23年度の黒字化目標について、「(完全仮想化技術の海外販売の動向次第で)1年早めるのは難しいが、少し前倒しというのは可能になってくると思う」と強気の見解を示した(同期のモバイル事業は1972億円の営業赤字)。
さらに、三木谷会長兼社長は、仮想化ネットワークの市場は15兆円規模に成長すると説明。そこにいち早く取り組んだ同社グループが「すさまじいマーケットシェアを取れる」と、海外への技術販売に強い期待を隠さなかった。
処理能力など劣る部分も
しかし、実際には仮想化ネットワーク技術の販売にはいくつものハードルが立ちはだかる。そのハードルの一つが、エリクソン(スウェーデン)やノキ…
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週刊エコノミスト
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