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大規模修繕業界に残る「リベート体質」に気を付けろ!=須藤桂一

大規模修繕 業界に残る「リベート」体質 コンサル主導の発注に注意=須藤桂一

 大規模修繕工事が必要となるマンションが近年増えている。マンション管理業協会の試算によると、マンション大規模修繕工事の市場規模は2005年に約4000億円だったが、20年には約8000億円まで膨らみ、15年で2倍の規模になった。数年後には1兆円規模に到達すると考えられており、この巨大な市場を巡ってコンサルタントや施工業者が激しい受注合戦を繰り広げている。

 大規模修繕業界で実は、今なお「リベート」の習慣が残り続けている。国土交通省は18年、一部の設計監理コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が修繕工事を受注できるよう、不適切に工作しているとして実態調査に乗り出し、マンション管理組合に対して注意喚起したが、その後も解決したと言える状況には程遠く、一部ではエスカレートしている傾向にもある。

 それは、業界紙に掲載される大規模修繕の「公募」条件にも表れる。見積もりに参加する施工業者の公募では、マンションの構造や規模、工事期間、工事の種類とともに、施工業者の参加条件として「資本金5000万円以上」などと指定されることがある。発注する管理組合側には、「資本金の額が大きければ安心」といったイメージがあるが、資本金5000万円以上の施工業者は全国でも数十社しかないことは知られていない。こうした条件に、「大規模修繕工事実績15年以上」「直近3年間のマンション大規模修繕工事の元請け実績10件以上」といった条件が加われば、おのずと受注業者は限定され、工事金額も高額となりやすい。実は、こうした条件を管理組合に提案しているのが設計監理コンサルタントであり、施工業者に対して一見、中立のようでいて、特定の業者が受注できるよう公募条件で誘導しているケースが後を絶たない。

「億円規模」の一大事業

 また、管理会社の系列の施工業者に大規模修繕工事が集中しているという実態も忘れてはならない。管理会社の多くは子会社などとして施工業者も抱えており、大規模修繕工事を重要な収益源と捉えている。特に元請け会社として大規模修繕工事に参加…

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