タワマンに積み上がる不都合な真実=米山秀隆
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タワマン 再び訪れる大量供給の波 積み上がる不都合な真実=米山秀隆
タワーマンションの供給が増え続けている。不動産経済研究所によると、20階建て以上のタワマンの年間供給戸数は、2020年はやや減少したものの、21年に再び増加に転じ、全国で47棟、約1・5万戸に達した(図1)。その後も開発は続いており、23年は57棟と09年以来14年ぶりに2万戸を突破する見通しだ。首都圏の都心部や湾岸エリアの大規模開発が控えるほか、最近は地方都市でのタワマン開発も増加している。
タワマンは立地の良さやスポーツジムなども備えたグレードの高い設備のほか、値崩れしにくく投資対象としても魅力があることから00年代以降、供給が大幅に増加した。その時期のタワマンが築15年程度となり、順次、第1回目の大規模修繕が必要になる時期に近づいたことで、タワマンが適時・適切な修繕実施により、先行きも資産価値を保っていけるかどうかが、ここ数年注目されてきた。
一般のマンションが抱える管理や維持・修繕の課題は、タワマンとなれば格段に難しくなる。すなわち、タワマンは500戸を超すような大規模な物件が珍しくないが、区分所有者が増えれば増えるほど合意形成は難しくなる。また、一時的な住まいや投資対象と考える区分所有者が多くなれば、管理や維持・修繕への関心は低くなりがちだ。
マンションの大規模修繕の費用は通常、戸数が多くなれば1戸当たりの負担は小さくなる傾向がある。だが、タワマンの場合は超高層という特殊な形状や設備の豪華さなどもあり、1戸当たりの負担は割高となる。国土交通省によると、大規模修繕工事の金額は1戸当たりで3階建て以下が最も高く、3階を上回るとそれより安くなるが、20階建て以上では4〜19階建てを上回るようになる(図2)。管理費も同様の傾向がある。
建て替えは不可能
さらに、タワマンの建て替えについては、一般の多くのマンションで活用している都合のいい建て替えスキームを利用できる見込みはない。すなわち、容積率や敷地の余剰を活用して建て替え後により多くの住戸を造り、余剰部分を売却することで建て替え費用の足しにする方法であ…
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週刊エコノミスト
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