新しい革新政党に求めれる 矛盾や禁忌を打破し続けた大島渚の精神
有料記事
片山杜秀の闘論席
大島渚(なぎさ)。戦後を代表する映画監督である。デビュー作は1959年の「愛と希望の街」。戦後復興から高度成長に向かう時代。が、貧富の差はまだまだ激しい。そんな日本に母一人子一人の貧しい家庭がある。母子はグルで鳩を売る。鳩には帰巣本能があり、隙(すき)を見てドヤ街に帰ってくる。
すると、先に売ったのとは別人にまた売る。一種の詐欺と言える。でも、そうせねば生きられない。少年の詐欺をなじる前に、貧困問題の全面的解決をはかれ。
だが、やがて貧富の差は縮む。もはや社会や経済の革命は不要かもしれない。大島は目標を変える。76年に「愛のコリーダ」を世に問う。阿部定事件に材を得たハードコア・ポルノ映画である。きれいごとの市民道徳によって隠されてきた男女の生々しい性表現を銀幕に解放しよう。一種の文化革命であろう。大反響を呼んだ。じきに性表現はより自由になった。「愛のコリーダ」の破壊力も社会に吸収されていった。
残り387文字(全文798文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める