株特別編 沸騰した「菅退陣相場」はつかの間か?高値の序章か?=渡辺浩志
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<特集 日本株 上昇相場へ>
株価は市場心理(PER〈株価収益率〉)と企業業績(EPS〈1株当たり利益〉)に分解できる。図1の通り、PERは日米で連動する傾向があるが、今夏以降は日本のPERが大きく下振れし、日米株価の乖離(かいり)を生んだ。
日本のPER下振れの主因は国内における政治不信の高まりだろう。ワクチン接種の混乱や緊急事態宣言の度重なる延長など、政府の新型コロナ対策が泥沼化する中で第5波が発生し、五輪開催の是非を巡って世論が分断され、いらだちの矛先が政治へ向いた。
9月3日に菅義偉首相が退陣を表明すると、新政権への期待が高まり、市場心理は一変。ワクチン接種の進展や新規感染者数の減少も重なり、PERの自律反発が主導する日本株の出遅れ修正が始まった。TOPIX(東証株価指数)のPERは、今夏に急落する前の水準(15・5〜16倍)まで上昇が見込めそうだ。
他方、EPSは拡大が続く見込みだ。EPSは世界景気を表すグローバル製造業PMIと連動する(図2)。足元、米中景気が踊り場の様相を呈しているが、世界の景気循環を規定する「半導体サイクル(世界半導体販売額の前年比)」は、デジタル化やグリーン化を追い風に拡大の勢いを増している。同PMIは予期せぬショックでもない限り、好不況の境界の50を割ることはないだろう。それゆえEPSは減速しつつも増加を続け、今年末には145ポイント程度へ到達しよう。
TOPIXは2250へ
PERとEPSの掛け算から、今年末のTOPIXは2250ポイントを展望できる。これは日経平均株価に換算すると3万2500円程度だ。PERの自律反発とEPSの緩やかな拡大に基づく無理のない株価予想である。
株価の下振れリスクには、コロナ禍の長期化や中国景気の減速のほか、新政権への期待剥落がある。現在の株高は期待先行なだけに、新政権が国民から支持される経済政策やコロナ対…
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週刊エコノミスト
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