経済・企業独眼経眼

戻らない「世界GDP」と独り勝ちGAFAM=藻谷俊介 成長軌道に戻らない「世界GDP」と突き抜けるGAFAMの埋まらない隔たり

戻らない「世界GDP」と独り勝ちGAFAM=藻谷俊介 

 現時点でエコノミストが検討しなければならない最大の論点の一つは、国民経済の新型コロナウイルス禍以前のトレンドへの回帰が期待できるかどうかだ。

 筆者らは、世界経済の7割弱を占める主要17カ国のGDPを合成した「世界GDP」を四半期ごとに計算しており、このほど今年4~6月期の数値が確定した。通常は前期と比較して成長率を測るが、コロナによって線形が大きくゆがんだ今回の場合、重要なのは線形がどこまで戻っているかだ。

 図1を見てほしい。経済は速度を落としながら緩やかに回復を続けていることは疑いないが、ますます明らかになってきたのは、コロナ前に想定されていたような成長ライン(点線)との段差が解消していないことである。8月の当コラムでは、米雇用統計でも同様の現象が見られ、それがむしろコロナ禍で打たれなかった業種で発生しているため、コロナ後も雇用が戻らない可能性が高いことを指摘した。世界全体としても、そのリスクが顕在化してきたのだ。

 だが、そんな折にもかかわらず、株価は世界的に上昇し、再び新高値を更新する国も出てきた。マクロ経済よりも、政府の金融政策との関係だけで株価を論じがちな近年の市場の悪い癖が復活してきたのかもしれない。

半導体需要が再加速

 同時に、株価のいわゆる「GAFAM」やハイテクへの依存が一方的に高まっていることも指摘できる。春先から一旦は調整に入った半導体需要が、最近のデータでは一様に再加速する兆しがある。図2に8月までの中国の集積回路輸出額を示すが、韓国、米国などもこれと同様の傾向である。

 ロックダウン(都市封鎖)に伴うI…

残り391文字(全文1091文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事