快走IT関連財の足を引っ張る自動車大幅減産の深刻度=藤代宏一
鉱工業生産を下押しする自動車産業=藤代宏一
経済産業省が発表した7月の鉱工業生産指数は、前月比マイナス1・5%と、2カ月ぶりの減産であった。過去数カ月、一進一退を繰り返してきたが、生産の水準はパンデミック発生前をおおむね回復しており、大きく見れば製造業の底堅さを示す結果となった。もっとも、内訳は明暗が分かれており、特に自動車の不振は懸念される。先行きは自動車の回復が鍵を握っていると言える。
先行きの生産を読むうえで有用な生産予測調査によれば、全体の生産は8月が前月比プラス3・4%、9月はプラス1・0%と2カ月連続の増産計画であった。この調査結果を基に経産省が独自に試算した8月の生産予測値はプラス0・1%であり、仮にこの通りとなれば、横ばいか微増での推移が続くことになる。
ただし、調査が8月上旬に実施されたことには注意が必要だ。自動車大手各社は、世界的な半導体不足や東南アジア地域におけるパーツ工場の操業停止といったサプライチェーンの目詰まりにより、9月の大規模減産を決定している。調査時点でその影響がどこまで反映されているか不明だ。
生産予測調査によれば、輸送用機械の生産計画は8月にマイナス7・3%の大幅減産となった後、9月はプラス3・1%の増産となっているが、9月の計画は下方修正される可能性がある。自動車が足を引っ張ることで、全体が下押しされる懸念がある。
電子は7カ月連続増産も
自動車の苦戦をよそに快走するのは、IT関連財だ。電子部品・デバイス工業の生産は前月比プラス0・9%、3カ月平均ではプラス1・5%と7カ月連続の増産であった。5G(第5世代移動通信システム)、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)といったテーマの下で集積回路(IC)、固定コンデンサー、電子回路基…
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週刊エコノミスト
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