積み上がった家計貯蓄が「消費に回る」というもくろみが崩れる前に新政権がすべきこと=愛宕伸康
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膨張した家計貯蓄に消費押し上げ効果なし=愛宕伸康
9月末、4度目の緊急事態宣言が解除された。今後は、抑圧されてきた需要、つまりペントアップ需要が消費を押し上げると期待される。
日本銀行は4月の「経済・物価情勢の展望」で、「本来あるべき家計消費のうち、感染症下での消費機会の逸失により抑制されている部分」を「強制貯蓄」(forced savings)と呼び、20兆円程度と試算した。それが感染収束とともに少しずつ取り崩され、ペントアップ需要を顕在化させるとのシナリオを描く。
図1は、雇用者報酬や財産所得など(「雇用者報酬等」)にコロナ対策の現金給付などを含む「その他の経常移転(純)」を加えた「可処分所得」と、「家計最終消費支出」を並べたものだ。両者の差が「貯蓄」であり、2020年度はコロナの影響で異例の38・2兆円に上った。もし19年度並みの消費が行われたとすれば、すなわち「本来あるべき家計消費」が19年度の消費水準だったとすれば、それと実際の消費との差額である19・2兆円が強制貯蓄と考えられ、日銀の試算と大きく変わらないことが分かる。
バラマキではない対策を
ただし、意図せざる強制貯蓄が20兆円程度に上るからといって、それがそのまま消費を押し上げるとは限らない。資金循環統計を確認すると(図2)、確かに家計の「現金・預金」は20年度に入り大幅に増えているが、少なくとも00年以降を見る限り「…
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週刊エコノミスト
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