大阪・関西万博に間に合うか――大阪版ライドシェア構想 具志堅浩二
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大阪・関西万博時の移動需要に対応すべく「大阪版ライドシェア構想」が浮上しているが、国のルールとの隔たりもあり、まだ先は見通せない。
万博の半年前から閉幕までの期間限定で新規参入も
地域交通がやせ細っていく。路線バスの休廃止が広がる中、大阪府内にある筆者の実家近くを走っていた路線バスも2023年12月、運転手不足を理由に運行休止に。実家の父は自家用車を持っているが高齢で、いつ免許返納してもおかしくはない。
タクシーについても同年、父の不在時に80代後半の母の通院を手伝った際、配車可能なタクシー会社を見つけるのに苦労した。こうした交通弱者も含め、地域に暮らす人々の足をこの先どう維持していくのか。
こうした状況の中、23年8月に菅義偉前首相が、一般の運転者が自家用車を使って乗客を有償輸送するライドシェアについて、「そうした方向も必要かなと思う」などと発言。これを契機にライドシェア解禁を求める機運が高まり、大阪にも及んだ。
「タクシー業界の高齢化と人手不足は一朝一夕に解決できるものではなく、新たな交通手段としてライドシェアは極めて必要」と、大阪府の吉村洋文知事が意欲を示したのは同年10月の府議会の総務常任委員会でのこと。吉村知事が共同代表を務める日本維新の会は、国政選挙のマニフェストの中で、ライドシェアを含むシェアリングエコノミーの推進を掲げている。
大阪府は同年11月より、大阪市とともに、タクシー業界関係者や保険会社などを招いてライドシェア有識者会議を2度開催。その後「大阪版ライドシェア」の構想案をとりまとめ、年内に国土交通省へ提出した。
同案では、府内のタクシー業界で人手不足と運転手の高齢化が深刻化する中、25年4月の万博開催時などの交通需要増に対応する必要があるとして、万博開幕の半年前から閉幕までの期間限定で、ライドシェア導入を求めている。①府域全域・24時間運行、②タクシー事業者に加えてタクシー事業者以外の新規参入も可とする、③運転手は雇用契約もしくは業務委託契約、④需要に応じて運賃が変動する「ダイナミックプライシング」導入、などの案を盛り込む。
日本版は極めて不十分
国の方でも23年10月、岸田文雄首相が所信表明演説で「地域交通の担い手不足や移動の足の不足といった深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組む」と述べ、検討が本格化した。同年12月にデジタル行財政改革会議がライドシェアの制度案を盛り込んだ中間取りまとめを公表。その後、国交省がパブリックコメントを経て、24年3月下旬に「地域の自家用車や一般ドライバーを活用して行う有償運送(自家用車活用事業)」、いわゆる「日本版ライドシェア」に関する通達を発した。
それによると、日本版ライドシェア事業を行えるのは、タクシー会社のみ。営業できるのも、タクシーが不足している区域・時期・時間帯および不足分の車両数に限られる。これらは国交省が配車アプリのデータなどに基づいて算定し、公表する。運賃は、タクシーで導入済みの事前確定運賃制度に準ずる。
国交省は同年3月、東京都・神奈川県・愛知県・京都府の都市部を含む4区域でタクシー不足の時間帯や不足車両数などを公表。4月からこれら区域で日本版ライドシェアが解禁された。さらに、同年4月中には大阪府や福岡県などの都市部を含む8区域の不足車両数などを公表し、同年5月以降順次解禁する予定となっている。
このように日本版ライドシェアはあくまでもタクシー不足を補う存在、という位置づけであり、24時間運行やタクシー事業者以外の新規参入も可とする大阪版ライドシェア構想とは異なる。吉村知事は、この日本版ライドシェアについて「極めて不十分、ライドシェアというかタクシーの規制緩和。ライドシェアの本質はほぼ全て採用されていない」などと制度の検討途中からたびたび批判。また、「業界団体から支援されている自公政権では限界があるのかもしれない」などと嘆いた。
米ウーバー・テクノロジーズなど海外企業が展開するライドシェアに対して、「事業主体が運行に関する責任を負わない」など、以前から反対してきたのが全国のタクシー業界だ。
ただ、タクシー会社のみ運行できる日本版ライドシェアについては扱いが異なり、例えばタクシー大手の日本交通(東京都千代田区)は4月から事業に参入した。大阪タクシー協会の井田信雄専務理事も、「(日本版ライドシェアに取り組むかどうかは)個々の会社で判断すること。それを協会は止められない」と語る。
もっとも、大阪版ライドシェアについては「(昨年の)有識者会議には委員と…
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週刊エコノミスト
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