経済・企業

米国を起点とした世界の金融市場に波乱が2023年に起こるかもしれない=木内登英

ERBの出口戦略に注目が集まっている Bloomberg
ERBの出口戦略に注目が集まっている Bloomberg

米金利 11月にも金融緩和縮小開始 市場は23年の利上げを意識か=木内登英

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月22日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、次回11月2〜3日のFOMCでテーパリング(資産買い入れの段階的縮小)を実施する可能性を強く示唆した。これで金融市場の不確実性はかなり低下し、金融市場を攪乱(かくらん)するリスクはもはや小さくなったと言えるだろう。

 資産買い入れ策よりも、短期金利を直接コントロールする金利政策の方が、政策効果はより明らかである。そのため、政策金利引き上げの方が、金融市場に与える影響も大きくなりやすい。

 この点から、FOMCメンバーによる利上げ(政策金利引き上げ)の予想時期が、今回前倒しされた点が注目される。メンバー18人のうち半数の9人が2022年に1回以上の利上げ、23年末までに合計4回以上の利上げを見込んでいる。前回6月の見通しでは、過半数が23年末までに2回の利上げを見込んでいた。前倒しの背景にあるのは、足元での物価上昇率の上振れだ。

どうなる出口戦略

 筆者は、FOMCメンバーの米国の成長率、物価上昇率見通しは楽観的過ぎると考えている。コロナ関連の経済対策の効果剥落、感染問題の長期化などが、先行きの米国の成長率を予想以上に下振れさせるのではないか。

 また、コロナショックによる需給ギャップの悪化の影響が遅れて顕在化することなどから、23年にかけて、物価上昇率はFRBの2%の物価目標以下の水準へと下振れていく可能性が相応にあると考える。そのため、政策金利の引き上げの時期については、FOMCメンバーの見通しよりも後ずれするとみている。

 前回15年12月の利上げ開始は、テーパリング開始から24カ月後、テーパリング終了から14カ月後であった。これを今回のケースに単純に当てはめると、仮に今年11月にテーパリングが開始されれば、利上げ開始の時期はちょうど2年後の23年11月となる計算だ。

 こうした点を踏まえると、21年から22年にかけての世界の金融市場は、比較的安定した状態が期待できるのではないか。

 ただし、米国株はコロナ禍が克服されていく中で、逆に上昇モメンタムを低下させていくと見込まれる。コロナ禍で強まった巣ごもり傾向は巨大IT企業に追い風となり、それが米国株のけん引役を果たしてきた。さらに、スマホ証券投資アプリを用いて株式投資を新たに始める若年層の素人投資家、いわゆるロビンフッダーらが株価やビットコインの価格などを大きく押し上げてきた側面がある。

 コロナ禍が克服されていけば、巨大IT企業への追い風も弱まっていく。ロビンフッダーらも外出する機会が増えて、投資に割く時間が減り、その株式市場への影響力も低下していくだろう。一方、経済回復が遅れる日本では、株価は米国株の動きに劣後しやすい状況が続くだろう。そのため、この間、日本…

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