教養・歴史

ノーベル経済学賞 実験困難な現実の経済で 因果効果の測定手法確立=太田聰一

    左からカード氏、アングリスト氏、インベンス氏(米カリフォルニア大バークリー校、マサチューセッツ工科大、スタンフォード大のホームページから)
    左からカード氏、アングリスト氏、インベンス氏(米カリフォルニア大バークリー校、マサチューセッツ工科大、スタンフォード大のホームページから)

     2021年のノーベル経済学賞は、米カリフォルニア大学バークリー校のデービッド・カード教授、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のヨシュア・アングリスト教授、米スタンフォード大学のグイド・インベンス教授の米国の経済学者3氏に決まった。

     カード氏の授賞理由は「労働経済学への実証的な貢献に対して」、アングリストとインベンス両氏の授賞理由は「因果関係の分析に対する方法論的貢献に対して」。3氏に共通するのは「自然実験」を通じた因果効果の把握への貢献だ。1990年代以降、彼らの研究は他の広い学問分野に多大な影響を与えた。

     経済の分野では自然科学のような「実験」は容易ではない。例えば、移民の増加が自国労働者の賃金に与える効果を把握しようとしても、現実の経済での実験は不可能だ。たとえ移民が多い地域で自国労働者の賃金が低い傾向が見られたとしても、それが移民増加による直接的な効果(因果効果)なのか、他の経済変数が作用しているのかは分からない。

    政策立案の礎に

     しかし、何らかの事情で突然の移民流入という事態が生じたならば、それをあたかも「自然実験」(準実験)とみなし、その前後の賃金変化を調べることによって、移民流入の効果を測定することができる。カード氏が1990年に発表した論文では、キューバから米マイアミへの大量の移民発生という事象を用い、移民による賃金低下がほとんど観察されないという結論を得た。

     カー…

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