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首都圏4都県・大阪・愛知の庁舎所在地災害安全度はここだ!=伊東洋一

東京は西高東低 都心に潜む「土砂災害」=伊東洋一 

<首都圏4都県、大阪、愛知 庁舎所在地別 災害安全度調査>

 自治体の庁舎・役所のような大きな建物は構造計算がなされており、耐震診断や耐震改修工事もされている建物で、安全対策にほとんど不安はないといえる。防災拠点ともなる庁舎を各自治体の代表地点として、総合スコアから上位と下位を出した。リスクがない100点満点もあれば、高リスクといえる30点台もあった(表は原則80点以上の上位、40点以下の下位を並べ、都府県庁所在地はすべて記した)。

都心リスク

 一般的に東京都の地盤安全度は西高東低で、海や大きな河川から離れた平らな高台ほど地盤のいい場所が多い(表1)。

 いわゆる「下町」エリアは低地で海や川が近い地形であることから、おおむね土砂災害以外のリスクが高い場所といえる。また、奥多摩町の地盤改良比率が高いのは、傾斜地が多いことに起因するとみられる。

 7月に静岡・熱海で土石流で大きな被害が出ており、土砂災害というと自然豊かな崖をイメージするかもしれないが、都心でも土砂災害のリスクは潜んでいる。都内の高級住宅地である港区の南青山、白金、赤坂、渋谷区の広尾などは、江戸時代から続く武家屋敷の流れをくみ、跡地の高台はおおむね地盤がいいところが多い。だが、少し離れた場所や「堀」に向かう場所は傾斜があり、大規模造成された軟弱な人工地盤だったり、土砂災害警戒区域に指定されている場所であったりする。

 一方、関東大震災後に住宅地として発展した世田谷区、杉並区などの城西エリアは、避難先や移住先であったという歴史からも、高台の平坦(へいたん)地で安全な場所が多い住宅地向きの場所だ。しかし、河川の近くが急勾配になっており、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されている場所もあるため、不動産購入の際は注意が必要だ。

 東京都庁は、大規模な造成が行われた人工地形のため、液状化リスクが高く、地震が起こったときは揺れやすい場所だが、建物は安全に設計されている。

 また、神奈川県は、横浜市が鉄道を走らせるために海側を人工地形(埋め立て地)でつなげていったため、横浜市、川崎市などは水害や地震の揺れ、液状化リスクが高く、総合スコアが低くなっている(表2)。

 特に神奈川県のように起伏が多い地形は、地盤が複雑になっており、ほんの数メートルでも離れていれば、災害リスクが潜んでいることもある。

人工地形は要注意

 埼玉県庁は江戸時代の宿場町跡で、大宮台地という安定した良好な地盤上にあり、低地部や低地を埋めた人工地形を避けた場所にあり、安全な場所と言える(表3)。埼玉県中部に位置する嵐山町や鳩山町の庁舎所在地は「山」のつく地名の通り、硬い岩盤上にあり、100点満点だった。

 千葉県庁は、千葉港に注ぐ都川を利用した輸送の利便性からこの場所に建設され、三角州性低地という地形上にあり、海や川からだんだん標高が高くなっていく途中にある(表4)。勝浦市が100点だったのは、海から離れた高台にあるためだ。一方、富津市と浦安市は、池沼や海浜を埋め立てた人工造成地であるため低い評価となった。東京都、千葉県の東京湾沿いや、愛知県や大阪府の臨海部などスコアの低いエリアは人工地形が原因だ。おおむね、大都市は海運・水運から都市が発達したこともあり、海に近い場所はスコアが低く、海から離れた高台に行けばスコアが高くなる傾向がある。

 大阪府庁は上町台地という砂礫(されき)台地の北端にある。近くには大阪城があり良好な地盤だ(表5)。

 愛知県庁の所在地は、熱田台地と呼ばれる砂礫台地上にあり、この…

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