中国版総量規制で住宅の需要と供給の抑制を狙うも、経済は大幅減速へ=齋藤尚登
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危機 1 不動産 過剰債務の圧縮を「厳命」 成長率の押し下げ要因に=斎藤尚登
中国の不動産市場が変調に見舞われている。2021年9月の住宅新規着工面積は前年同月比14・3%減、住宅販売金額は同16・9%減となった。デベロッパーの開発意欲と、消費者の購入意欲はともに減退している。この背景にあるのが、中国版「総量規制」の導入だ。総量規制は大きく二つからなり、不動産開発業者に対する過度な負債の抑制と、銀行による過度な不動産貸し出しの抑制である。
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不動産開発業者に対する規制は、「三つのレッドライン」と呼ばれている。中国人民銀行と住宅・都市農村建設部が昨年8月、不動産開発業者に対して示したもので、①前受け金控除後の総負債比率(総負債÷総資産×100)が70%以上、②純負債資本比率(有利子負債から現・預金を控除したもの÷資本×100)が100%以上、③現金短期負債比率(現・預金÷短期負債×100)が100%以下──であることを問題視。これらの基準に抵触した数と融資管理とを結び付ける厳格な規制を開始した。三つとも抵触した高リスク企業は「赤」に分類され、以後は新たに有利子負債を増やすことはできないとされた。
もう一つの総量規制が、中国人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会が昨年12月末に発出した「銀行の不動産貸し出し集中度管理制度の構築に関する通知」である(今年1月1日に発効)。同通知によると、銀行は資産規模などによって5分類され、大型銀行の不動産貸出残高が貸出残高全体に占める割合は最大で40%(うち個人住宅ローンは32・5%、残りはデベロッパー向け貸し出し)、最も同比率が低く設定された農村銀行は同12・5%(うち個人住宅ローンは7・5%)とされた。
デフォルトは不可避
こうした中で、過重債務問題を抱えるデベロッパーは、負債の圧縮を余儀なくされた。中でも高リスクの「赤」に分類された、中国第2位の不動産開発業者の中国恒大集団は、物件の大幅値引きにより現金化を急ぎ、出資先株式を売却するなどして負債の圧縮を図った。これにより、21年6月末の有利子負債は5718億元(約9・8兆円)と、20年3月末のピークからは3000億元ほど圧縮された一方で、資金繰りは急速に悪化した。取引先による代金未払いの告発や、銀行による同社預金の凍結、工事の中断などが相次ぎ、経営破綻の危機に直面したのである。
恒大問題は、今後どのような展開が想定されるのであろうか。同社は大手であるが民営企業であり、中国政府にとって、どうしても救済しなければならない対象ではない。ただし、予約販売によって既に物件を購入済みの人も多く、事業が完全にストップすると社会不安などの面でも弊害は大きい。このため、大胆なリストラを実施した上で、恒大に事業を継続させるか、経営破綻しても他社が同事業を引き継ぐことが想定されよう。その過…
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週刊エコノミスト
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