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DXの起爆剤、注目のヘルステック 治療用アプリ、AI創薬=前田雄樹
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医療・薬のDX 病気はアプリで治す時代へ AI創薬で新薬の市場投入加速=前田雄樹
医療機関で処方されたスマートフォンのアプリで病気を治療する──。そんな時代がやってきた。医療系スタートアップのCureApp(キュア・アップ、東京都)は2020年8月、禁煙治療(ニコチン依存症治療)用アプリの承認を取得、同年12月に保険適用され、販売を開始した。同社によると、すでに100を超える医療機関がアプリによる禁煙治療を導入している。
高血圧や不眠にも
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治療用アプリが医療機器として承認され、保険適用になったのは国内で初めて。治療用アプリの実用化は欧米勢が先行しているが、未開拓の領域も多く、日本企業が勝負できる余地も十分にある。実際、禁煙治療用アプリの実用化はキュア・アップが世界初だった。同社は19年に米国法人を設立しており、国内で開発している治療用アプリを日本発のデジタル治療として海外展開していく方針だ。
キュア・アップの禁煙治療用アプリは、呼気中の一酸化炭素(CO)濃度を測定するIoT機器がセットになっており、禁煙補助薬と組み合わせて使う。対象は医療機関でニコチン依存症と診断された患者で、医師の判断に基づいて医薬品のように処方される。
患者は自分のスマートフォンにアプリをダウンロードし、医師から発行された「処方コード」を入力してログインすると使えるようになる。日々の体調や禁煙状況をアプリに入力すると、吸いたい気持ちを抑える方法などを患者の状況に応じてアドバイスし、行動変容を促す。キュア・アップが国内で行った臨床試験(治験)では、アプリを使った患者の63・9%が治療開始24週間後も禁煙を継続。アプリを使わなかった患者より13・4ポイント高かった。
治療用アプリの開発は、ここ数年、国内で活発化している。日本では14年に旧薬事法(現医薬品医療機器等法)が改正され、プログラム単体でも医療機器として承認を取得できるようになった。以来、キュア・アップのようなスタートアップに加えて製薬などの大手企業も開発に参入。インドの調査会社kbvリサーチによると、治療用アプリを含むデジタル治療の世界市場は20年の34億ドルから27年には145億ドルに達すると予測されており、日本でも厚生労働省がガイドラインを整備するなどして開発を後押ししている。
キュア・アップは、禁煙の他に四つの疾患で治療用ア…
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週刊エコノミスト
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