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コインパーキングに土地を貸す人は、個人事業税が還付されるかもしれない=遠藤純一
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時間貸し駐車場への課税巡り 東京都敗訴で5年分還付も=遠藤純一
個人事業税の課税をめぐる裁判で東京都が敗訴し、波紋が広がっている。焦点となったのは個人事業税が課税される事業の一つ「駐車場業」の解釈で、コインパーキング業者に一括して土地を貸し付けていた地主側の「駐車場業には当たらない」との主張が認められたのだ。同様の形で土地を活用する地主は少なくなく、還付の対象者が広範囲となる可能性がある。
今回の裁判では、今年3月に東京地裁が地主側の主張を認める判決を言い渡した後、判決を不服として都側が控訴。しかし、東京高裁も今年8月、都の控訴を棄却し、都側が上告を断念した。都はこれを受け、都が独自に定めた取り扱い「個人事業税課税事務提要」で、「駐車場業」の基準を変更。地方税法上の時効に達しない過去5年分について、納税者にさかのぼって還付することも視野に対応するとしている。
地裁・高裁判決によると、都内に住む地主Aさんは2015年、10台が駐車可能な九州にある土地をコインパーキング駐車場企画会社B社に貸し付けた。貸し付け方法は、比較的低額だが駐車場の稼働率にかかわらず安定した収入を得られる「土地賃貸方式」で、Aさんは16~18年分の確定申告の際、青色申告決算書に年間の収入約450万円、必要経費としてアスファルトの減価償却費6万円弱をそれぞれ計上していた。
ここで問題となったのが、都道府県税である個人事業税の課税だ。都は18年、Aさんの確定申告書を基に、Aさんが「駐車場業」を行っているとして、16~18年分の個人事業税(年額約5万円)を課税した。これに対し、Aさんはコインパーキング業者に一括して土地を貸し付けているにすぎず、駐車場業には当たらないと反論し、課税処分の取り消しを求めて19年9月、東京地裁に提訴していた。
「不合理な判断基準」
個人事業税は、個人が地方税法などに定められた70業種のうちどれかを営んでいる場合に課税される。税率は事業により異なり、不動産貸付業など第1種事業は5%、畜産など第2種事業は4%、医師など第3種事業は5%となっている。今回、問題となった駐車場業は第1種事業に該当するが、駐車場業の認定基準は法令では具体的に定められていない。
そこで、総務省は「技術的助言」として「地方税法の施行に関する取り扱いについて(道府県税関係)」の中で認定基準を補っており、駐車場業…
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週刊エコノミスト
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