マーケット・金融 円安 原油高
ドル高でも原油価格が急騰する「摩訶不思議」な現象が起きているワケ=江守哲
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ドル高でも原油高 米緩和縮小で崩れる逆相関 輸入国は通貨安と「二重苦」=江守哲
米国産標準油種(WTI原油先物)価格が10月25日に7年ぶりの高値となる1バレル=85・41ドルをつけた。原油など主要コモディティー(商品)は、米ドル建てで取引される。原油価格と米ドルは基本的に逆相関(逆の動き)の関係にあり、ドル安の際には原油価格は上昇し、ドル高では下落する傾向がある。しかし、足元ではドル高にもかかわらず原油価格は高騰している。何が起きているのだろうか。
その背景には、まず需給ギャップの拡大がある。昨年のコロナ禍からの世界経済の急回復で、世界的に石油需要が回復している。しかし、世界の石油供給の3分の1を担っている石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC加盟国で構成される「OPECプラス」は、依然として協調減産を継続中。8月より、これまでの減産枠を毎月、日量40万バレルずつ縮小させているが、需給バランスのギャップは埋まっていない。
また、世界最大の産油国になった米国の産油量も日量1100万バレル前後から増えず、一方で国内の石油需要は近年では最高水準にある。さらに、欧州では天然ガス供給が不足し、燃料の代替として原油を使用する動きがみられていることも、原油価格の上昇につながっている面がある。このように世界的に石油需給は引き締まりつつあることが、ドル高下での原油高の背景にあるといえる。
一方、現在のドル高は、米国の金融政策の変更が視野に入っていることがある。コロナ禍による経済を支えるため、米連邦準備制度理事会(FRB)は積極的な量的緩和策を実行し、その結果、景気は回復途上にある。しかし、11月3日にFRBは同月内に緩和策の終了に向けたテーパリング(資産買い入れ縮小)の開始を決定。2022年中の利上げも視野に入る状況である。このように、他国に先駆けてFRBが金融政策を変更する姿勢を見せてい…
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週刊エコノミスト
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