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生物多様性保護を国家戦略に 気候変動に続くアピール材料=岸田英明

「広東省で国内初のクロアシドゥクラングール(絶滅危惧種のサル)人工繁殖」「山東省の黄河デルタの湿地が回復」「福建省でサギ2757羽を違法捕獲した3人に罰金137万元(約2300万円)」──。これら最近の中国のニュースには共通点がある。いずれも生物多様性保護の成果として報じられていることだ。

 中国では生物多様性への注目が高まっている。10月中旬に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が昆明で開かれ、政府が宣伝と指導を強めているためだ。習近平国家主席はオンラインでの基調講演で、中国の「生態文明」建設の成果をアピールした上で、15億人民元(約250億円)を拠出して「昆明生物多様性基金」を作り、途上国の活動を支援▽国家公園を主体とする自然保護地体系の構築を加速(5カ所計23万平方キロを最初の国家公園として正式に認定)▽二酸化炭素(CO2)排出量のピークアウト(2030年以前)及びカーボンニュートラル(排出実質ゼロ=60年)実現目標を推進──などの方針を示した。

 会議では「(世界の)生物多様性の喪失トレンドを30年までに回復へと転換させる」ことなどを確認した昆明宣言を採択。22年4月に再び同地で会議を開き、新たな世界目標の採択を目指している。

「親子連れのゾウ」も利用

 中国政府はCOP15に先駆けて、10月上旬に「生物多様性保護」白書を発表。生物多様性保護を国家戦略へと引き上げ、近く30年までの10年行動計画を定める方針を記している。新華社が宣伝用に作成した表紙イメージには、親子連れのゾウの群れが砂地を歩く様子をドローンで撮影した写真が使われている。21年の春から夏にミャンマーから雲南省へ数百キロを移動し、一時市街地に入るなどして有名になった群れで、習氏もCOP15で「(のちに無事に元の生息地へ戻れたのは)中国の野生動物保護の成果」とアピールしている。

 中国政府は続いて10月中…

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