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生前贈与が使えなくなる日=山崎信義

特例が使えるうちに……
特例が使えるうちに……

生前贈与 最強の節税策が使えなくなる前に 贈与税の特例措置の活用を=山崎信義

「生前贈与は、本当に使えなくなるのか」

 最近、筆者はそのような質問を頻繁に受けている。これは、2020年12月発表の与党「2021年度税制改正大綱」に「…相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」と記述されたことが発端である。

 この記述に関するマスコミ報道等の影響を受けて、「贈与した財産も最終的に贈与者の相続税の課税対象とされるので、相続税の節税対策としての生前贈与が使えなくなると聞くが、本当か?」と心配する人が増えているようだ。

 政府税制調査会でも同趣旨の答申が19年9月に出されており、今年10月発表の自民党の総合政策集にも「資産移転の時期に中立な制度の構築に向け、検討を進めます」との記述がある。将来的に「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税」する贈与税の改正が行われるのは確実だと思われる。

 ただ、具体的な改正内容や時期は決まっておらず、今年12月に発表予定の与党「2022年度税制改正大綱」で、どのような記述がされるのか注目されるところだ。

年110万円は控除

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 そもそも生前贈与が、なぜ相続税の節税に有効なのかを解説しておこう。

 暦年課税制度を利用した生前贈与が、相続税の節税対策として有効な理由は、現行の贈与税と相続税の計算の仕組みによる(表左)。暦年課税制度では、その年1月1日から12月31日の1年間に贈与でもらった財産につき、基礎控除の110万円を超える金額に税率を掛けて贈与税を計算する。贈与を受けた金額の大きさに応じて税率も高くなるので、一度にまとまった額の財産の贈与を受けると、贈与税の負担が重くなる。

 また、被相続人から財産を相続した人が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産は、「生前贈与加算」により原則、相続税の課税対象とされる。このため、1回(年)当たりの贈与額を基礎控除の110万円以下に小さく分割し、贈与する人数と回数(年)を多くして、相続開始の3年前までに渡し切れば、子や孫に無税で財産を移転できる。

 例えば、70歳の人が子や孫5人に毎年100万円の現金を10年間にわたって贈与後、85歳で亡くなった場合、贈与した現金5000万円については、相続税の対象にならない。一方、贈与者が10年目の80歳で亡くなったときは、相続により財産を取得した子が相続開始前3年以内に贈与を受けた現金は、「生前贈与加算」により相続税の課税対象とされる。早めの生前贈与が得策となるわけだ。

生前贈与加算の期間延長か

 政府が進めようとする「相続税と贈与税の一体化」についても、解説しておこう。

 現行の税制では、贈与による財産の移転時期を調整することにより、無税で次世代に財産を渡すことができる。これを防止するため、贈与の時期に関わらず贈与財産については、贈与者の相続税の対象となるような税制の構築が検討されることになり、これが「相続税と贈与税の一体化」である。

 現行税制の中で「相続税と贈与税の一体化」を実現できるものとしては、「相続時精算課税制度」がある(表右)。これは原則、その年1月1日現在で、6…

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