経済・企業 半導体 需要大爆発
GPUの重要性が高まり、エヌビディアがメタバース時代主役に=津田建二
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躍進エヌビディア GPUの重要性が高まる メタバース時代の主役へ=津田建二
米エヌビディアは、製造専門のファウンドリー(受託生産)企業も含めた半導体企業ランキング(IC Insights調べ)で、2021年に7位に位置づけられており、売上高230億ドル(約2兆6000億円)のファブレス半導体メーカーだ。同社の株価は上がり続け、時価総額は21年11月には一時8000億ドルを超えた。現在は7000億ドル程度だが、いずれ1兆ドルに向かうという報道もある。
エヌビディアは長年、半導体業界トップだった米インテルの時価総額2200億ドルを超えるような企業になぜなったのだろうか。もともとゲームの絵(グラフィックス)を描くためのチップであるGPU(画像処理回路)を設計していたファブレス企業だった。今でもゲーム部門の売り上げが全社の中で最も大きい。ところが近年、AI(人工知能)ブームである。また、クラウドコンピューティングも当たり前に使われるようになってきた。ここにGPUが大量に使われ始めたのである。
エヌビディアの最新の決算である21年8~10月期の業績を見ると、売上高は前年同期比50%増となる71億ドルで、ゲーム機向けが同42%増の32・2億ドル、データセンター向けが同55%増の29・4億ドルとなっており、AIやクラウド需要のデータセンター向けがゲーム向けよりも伸びている。
今なぜGPUか。GPUに集積されているレンダリング機能(平面図を手軽に立体モデルに変換したり、写真のようなイメージを描き出す機能)は、積和演算(A1×B1+A2×B2+・・・・An×Bn)を使い、この積和演算器が大量に集積されている。この積和演算は、AIのニューラルネットワーク(人間の神経細胞網に当たる)モデルの演算と同じ構造だからである。加えて、演算専用のプロセッサーであるGPUは、汎用(はんよう)性の高いCPU(中央演算処理装置)とは違い余計な命令が入っていない。
「工業用にも使える」
エヌビディアのグラフィックスチップは、ゲームで描いた映像を現実の世界にも適用できることでVR/AR(仮想現実/拡張現実)の世界にも使われている。コンピューターで絵を描く作業はGPUの機能そのものだからである。
VR/ARで描く画像を、できるだけ実写に近い状態に近づけようとする「レイトレーシング技術」は昔からあったが、写真と区別がつかないくらいの出来栄えにするためには、とても長い時間がかかっていた。生まれた時が高齢者で年を取るにつれて若返っていく、という映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」でもレイトレーシング技術が使わ…
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週刊エコノミスト
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