法務・税務

税理士 会計事務所規模が「二極化」 M&A活用などで成長加速=中尾安芸雄

二極化が進む会計事務所
二極化が進む会計事務所

日本の中小零細企業(法人)は、約270万社。その多くが近隣の税理士(または公認会計士)事務所あるいは税理士法人と顧問契約を結んでいる。つまり、全国津々浦々にあり、経営者にとって身近な存在が会計事務所といえる。

 会計事務所業界の特徴は小規模事務所が多いことにあり、その数は約4万といわれる。税理士制度が戦後施行されて約70年たつが、日本最大級の会計事務所である辻・本郷税理士法人でさえ、顧問先企業数では全体のシェアでみると1%に届かない。税理士・職員合わせて5人前後の事務所が圧倒的に多い状態が昭和・平成の時代を通して今も続いている。街中から姿を消した多くの他業種と比較すると極めて安定的、そして変化の少ない業界といえるだろう。

 背景には、会計事務所の業務が労働力に依存する労働集約型サービスであり、長く法人化が認められなかったことなどがある。また、税理士や担当職員との人間関係が重視され、必ずしも顧客が大規模な事務所を必要としていなかったという事情がある。しかし、税理士法人制度の導入もあり大規模化が進み、近年それが加速している。

1000人規模の出現

 図は、グループ会社などの職員を含めて公表する職員数が約200人を超える主な全国の会計事務所をまとめたものだ(4大監査法人系税理士法人を除く)。

 昭和から平成前半期までは、職員数が50人ともなれば地域の大事務所であり、100人を超える事務所は全国でも数えるほどしかなかった。だが、ここ10年ほどで事務所の大規模化が進み、現在は1000人超えが4事務所、200人超えは30以上に達している。

 この動きは、多くの小規模事務所が大規模事務所に顧客を奪われ、総じて劣勢に立たされていることを意味する。小規模事務所のなかには大手に対抗するため、少数精鋭、つまり税理士だけで顧客対応を行う事務所もある。具体的には税理士ではない職員の数を絞り、税理士が全面的に顧客の対応を引き受けることで、顧客との信頼関係を築き顧客離れを阻止している。

 一方、税理士以外の職員を抱える小規模・中規模事務所は、職員のサービスを向上していかなければ、組織力や宣伝力で優位に立つ大規模事務所に徐々に押される傾向は続いていくとみられる。

 図の縦軸は、大規模事務所をサービスの特徴を大まかに三つに分類したものだ。現在でも多くの事務所は、会計処理と法人税、所得税、消費税の税務申告が基本業務である。「税務型」とは、税務を中心に置きその周辺業務もカバーする戦略だ。顧客の多くが中小零細企業で、他士業と連携して経営者の課題を解決する。

 一方、高度な税務相談など多様なニーズのある上場企業グループ会社や中堅企業への対応は税務型では難しい。事業承継、M&A(企業の合併・買収)、事業再編、国際税務、IPO(新規株式公開)支援など幅広いサービスを提供し、中堅企業クラスもターゲットにするのが「総合型」だ…

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週刊エコノミスト

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