週刊エコノミスト Online 洋上風力 価格破壊
《オンライン先行特集》台湾の経験で臨んだが… 三菱商事の入札価格に驚愕したJERA
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秋田県沖など3カ所で洋上風力発電所を建設・運営する企業の入札で、三菱商事グループが、上限価格29円の半値から3分の1という衝撃的な価格で落札し、産業界に衝撃が走っている。
東京電力と中部電力の合弁会社で、台湾で洋上風力を開発しているJERAも入札に挑戦。三菱商事に次いで秋田県2海域で20円を切る価格を出したが敗退した。矢島聡執行役員に、日本初となった洋上風力発電の衝撃的な入札結果と今後の対応策を聞いた。(聞き手=金山隆一・編集部)>>>「洋上風力 価格破壊」特集はこちら
――今回の入札にはどのような姿勢で臨んだのか。
矢島 洋上風力はとてつもなく大型で複雑なプロジェクト。構造物一つ一つは大きく、海洋工事は困難を極め、操業も保守も難しい。海域を占有するから地元の協力も欠かせない。経験があり、覚悟のある会社でないと完遂できない。JERAは長年の電力事業の経験を活かし、再生可能エネルギーの経験があるJパワー、北欧最大のエネルギー会社で洋上風力の実績が豊富なエクイノール(旧ノルウェー国営石油スタトイル)をパートナーに迎え入れて、3社で方向性をしっかり合わせて入札に挑んだ。
日本で再エネの基幹電源化は避けて通れない。大きな利益は望めないが、サステナブル(持続可能)な形にして、利潤を分け合って、モチベーションを持って産業を育てていかないといけない。その大義名分は洋上風力という新産業を立ち上げようとしてきた洋上風力官民協議会の中にも確かにあった。その状況で各社が知恵を絞った数字が今回の結果だった(表参照)。
大企業の疲弊戦になる
――三菱商事が予想外の安い価格で落札した。
矢島 日本には洋上風力の人材がいない。資本力はあっても経験者がいない。当社は台湾にどんどん日本人を送り込んで、その人材をうまく循環させて日本に貢献させないといけない、という絵を描いていた。その中で出した数字なので三菱商事が落札した数字は驚愕した。
推測だが、三菱商事は資本費(開発、建設に必要なコスト)を極限まで削ってリスクをどこまで取れるか徹底的に検討し、洋上風力で先行する欧州で調達した場合と日本での価格を比較して「ここまでは下がるはずだ」「ここは挑戦しよう」と検討したのだろう。
20円でも勝てた三菱商事
――三菱商事は価格以外でも評価された。
矢島 三菱商事は与えられたルールのなかで勝ち切った。結果論だが、価格面では三菱商…
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