週刊エコノミスト Online 洋上風力 価格破壊
《オンライン先行特集》敗れた企業が納得できる制度とは? 弁護士が改善案を緊急提言
有料記事
「地元の支持を失えば洋上風力発電所は成立しない。いかに地元にとって魅力あるプロジェクトにするかが重要だ」と語るのは、国内外の発電所や再生可能エネルギーの法律アドバイザーを300件以上務めてきたベーカー&マッケンジーの江口直明弁護士。日本初となった洋上風力発電の入札制度の問題点や今後の対応策を聞いた。(聞き手=金山隆一・編集部)>>>「洋上風力 価格破壊」特集はこちら
今回、秋田県と千葉県の3海域で行われた洋上風力の入札は、国際入札水準に近い価格で競争が行われた。欧州の直近価格はキロワット時6円、台湾は同9.12円の水準。ただし、欧州はサプライチェーン(部品などの供給網)が構築されており、国が一定の開発リスクを引き受けるセントラル方式という入札制度を導入していた点は考慮する必要がある。
上限FIT(電力の固定価格買取制度)価格29円から大幅に低い落札結果(表参照)となったにもかかわらず、応札意欲を失っていない日本企業は存在する。しかし、「大資本による疲弊戦が始まる」という懸念はみな持っている。
洋上風力の整備で先行する欧州でもそうした声は出ている。2019年11月にコペンハーゲンの洋上風力セミナーでも欧州の海域で洋上風力を多数手がけてきたオランダの海洋土木専門工事業者の社長は「入札に勝つためには1ユーロでも安く調達するために、入札者がサプライヤーに乾いた雑巾を絞れと圧力をかけるではなく、共に産業を育成し、皆で一定の利益を確保し、息長くやっていく形にしないと共倒れになる」という警鐘をしていた。
入札評価の情報開示を
今回の入札では、事業実現性という定性評価がどのように評価、配点された…
残り1064文字(全文1764文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める