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《オンライン先行特集》原発400基分の開発 浮体式洋上風力は日本の巨大な商機

洋上風力発電の「着床式」と「浮体式」
洋上風力発電の「着床式」と「浮体式」

 価格破壊が話題になっている洋上風力発電は「着床式」だが、次に日本で導入が期待されるのは「浮体式」だ。着床式よりも建設コストが高く大量導入にはまだ時間がかかる。しかし日本が世界のトップに立てる可能性を残した有望産業。将来的には日本で原発400基分相当の建設が見込まれる。すでに戸田建設、丸紅、東京ガス、日立造船などが参入を決めている。>>>「洋上風力 価格破壊」特集はこちら

水深50㍍以上は浮体式

 洋上風力発電の種類は大きく2つある。着床式と浮体式だ。着床式は海岸線から比較的近い水深50㍍以内の海域に杭などの構造物を直接地面に打ち込んで風車を固定させる方式だ。

 一方、浮体式は水深50㍍以上の洋上に風車をのせた構造物をチェーンでつないで浮かせる。

 海域の占用に関する統一的なルールを定めた再生可能エネルギー海域利用法に基づく入札方式で、2021年12月に落札事業者が決定した秋田県や千葉県の洋上風力発電所はすべて着床式だ。着床式は実用化の技術が確立している。欧州が先行して大量導入を実現しており、日本でも今後導入が進む。

 それに対して浮体式は、国内はもちろん欧州をはじめとする海外でも開発途上段階だ。欧州では、複数のプロジェクトが同時並行して進展中だ。1基での実証の後、複数基によるプロジェクトで検証を重ねて、商用に至る計画が一般的となっている。

戸田建設などの企業連合が商用事業を開始

 浮体式の重要性は高まっている。地球温暖化対策の国際枠組みパリ協定で、産業革命以前と比べた地球の気温上昇を1.5度以内に抑える目標が掲げられている。欧州、米国、韓国などは2030年までの野心的な導入目標や開発計画を相次いで発表(表1)。着床式の導入可能海域は水深50㍍以内の浅海に限られるのに対して、浮体式の導入海域は限定されないからだ。

 日本でも2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を達成するには浮体式の大量導入が絶対に必要で、30年以降に洋上風力の中心になると風力発電業界では言われている。

 日本風力発電協会の試算では、日本の浮体式の潜在導入可能量は合計出力4億2500万㌔㍗に及ぶという。実に原発425基分だ。

 日本は政府の実証事業を経て、ようやく実用段階に入りつつある。実際、21年6月に長崎県五島市沖で、戸田建設を代表企業とする企業連合が国内初となる1.68万㌔㍗の商用浮体式洋上…

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