週刊エコノミスト Online 洋上風力 価格破壊
《オンライン先行特集》安値落札でも将来に期待 日立造船、東芝、千代田化工、日揮の思惑
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秋田県沖と千葉県沖の計3海域で計画されている洋上風力発電の入札で、上限FIT(固定価格買取制度)価格の半値から3分の1という三菱商事の入札価格は、洋上風力発電への参入を目指していた部品メーカーやEPC(設計・調達・建設)請負業者に衝撃を与えている。>>>「洋上風力 価格破壊」特集はこちら
コスト圧力への不安
「正直言って不安だ」「コスト削減でEPCを請け負う側にとっては厳しい状況となった」「事業者から安くしろと言われても、できないことはできない」。
三菱商事の3区域の洋上風力発電落札価格は、洋上風力のEPC請負業者、機器・システムなどのサプライヤー(供給業者)に大きな衝撃を与えた。当初の予想を大きく下回る売電価格が提出されたことで、各設備や各種工事で、「厳しいコスト削減を求められることになるのではないか」という不安を抱いている。
インフラ事業者が契約価格を低く抑えて事業権を獲得するのは良くあることで、その際に一番コスト削減の圧力を受けるのがEPC請負業者であることが多い。
一方、発電プラントで言えば、タービンや発電機などの主要機器に対して価格低減圧力がかけられることはあまりない。コアの設備を買い叩くことは、事業の安定性を失うことにつながりかねないからだ。しかし、それらコアの設備を設置、接続し、プラントとして動くまで現地で汗をかくEPC請負業者への発注額に対しては、強い価格引き下げ圧力がかかることが多く、赤字プロジェクトを抱えてしまう企業が、常に存在している。
今回の洋上風力発電案件で言えば、風車そのものは米GEから調達することになっている。そのうちナセル(発電機)については、東芝の京浜事業所(神奈川県横浜市)で製造し、供給する。この部分については134基の大量発注にともなうコスト削減要素はあるものの、それ以上に価格を下げる要求をGEが受け入れる要素はない。むしろ、GEの風力タービンの価格設定は、欧州向けより日本向けが2~3割程度、高値を設定しているという指摘もある。
対して三菱商事の落札額は数年前の欧州並みの低価格である。どこでコストを抑えるかといえば、やはり国内でのサプライチェーン(部品などの供給網)のコストを引き下げていくしかなくなる。これが国内サプライヤーを不安に落とし入れている背景だ。
メーカーは前向き
メーカーとしては、「FIT価格で収益は決まっているので、そ…
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