マーケット・金融

《緊急特集》「円高トラウマ」を感じにくい若年層の登場で起きる変化とは=高田創

円高が続いたことで日本企業は海外生産に切り替えた Bloomberg
円高が続いたことで日本企業は海外生産に切り替えた Bloomberg

円高トラウマ 損失ない若年層は変化の兆し 不安後退で海外投資は拡大か=高田創

 2021年8月は、戦後続いた1ドル=360円の固定相場制の転換となったニクソン・ショック(1971年)から50年の節目だった。ニクソン・ショック以降は、長期にわたり円高が続いたことに伴う「トラウマ(心的外傷)」が、家計や企業の行動に大きな制約を及ぼしていた。

 一方、過去10年近いアベノミクスでの異次元緩和も含めた対応もあり、円高の潮流は大きく転換している。そのトラウマからの転換は、海外投資に向け新たな投資フロンティアを実現すると同時に、企業行動にも影響を及ぼす。

「鬼」はいつも米国

 筆者の為替市場のストーリーラインは「だるまさんが転んだ」として、為替相場は米国が主導してきたという点だった。「だるまさんが転んだ」とは子供の遊びで、鬼が振り向くと参加者の行動が一転することを指す。為替市場で「鬼」はいつも米国で、米国の思いのままに為替の方向が決まるという経験則だった。ドル・円相場は本来、米国と日本の双方の要因で決まるはずだが、歴史的に見て大きな転換点はいつも米国サイドで決まるものだった。

 変動相場制下では、日本の貿易黒字拡大に伴う経済脅威の局面と重なり、米国からの円高圧力が日本の市場参加者にもトラウマとして意識されやすかった。今日、米国の脅威は中国に転じた。依然、日本の市場関係者に円高トラウマは存在するものの、日本が通商問題でターゲットになるリスク、円高を迫られる「円高ハラスメント」リスクも大きく後退し、日本への円高圧力は緩和されやすい。

 表は「為替の円高トラウママップ」で、円高へのトラウマの度合いを示している。米ドルを毎月一定額買い付けた場合のリターンを示し、円高でリターンがマイナスになった場合は青色、円安でプラスになったら赤色で示した。(拡大はこちら)

 80年代や90年代に社会人になった世代(表上部)は、長期にわたり円高・ドル安が続いた結果、ドルへ投資を行った期間の大半は損失(トラウマ)を意味する「青色」に染まった状況にある。

 一方、過去10年程度は「アベノミクス」「黒田緩和」が続いたことで、若者層(表下部)を中心に円高トラウマに対する変化の兆しが生じている。

 依然、社会の中枢を占める40歳代・50歳代のトラウマは続くものの、若者を中心に円高トラウマを感じにくい世代が登場してきた点が注目される…

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週刊エコノミスト

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