《戦時経済》【ウクライナ侵攻】プーチン政権を支える政商「オリガルヒ」 資源・国営が大きな影響力
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ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、西側諸国を中心にロシアに対して厳しい経済制裁が科されている。ロシア経済では資源分野を中心に国営企業が大きな存在感を示しているが、制裁によって大きな打撃を被ることが予想される。政権と結び付きの強い大物富豪実業家「オリガルヒ」も制裁の対象になっており、その影響はプーチン政権にも及ぶことになる。 >>>「戦時経済」特集はこちら
そもそもロシアにどのような有力企業があり、どのような影響力を持っているのか。代表的なロシア企業ランキングから、ロシア企業システムにおいて際立つ特徴を整理してみよう。露経済誌『RBK』が毎年「RBC500」という主要500社のランキングを発表している。表に示したのは最新版2021年(20年の売上高に基づいて21年末に発表されたランキング)のトップ10社である。
まず特徴的なのが、大企業群における資源部門の集中度の高さである。とりわけ上位は石油・天然ガス部門が占めており、1位がロシア最大の国営ガス会社であるガスプロム、2位が国営石油最大手のロスネフチ、そして3位が民間石油会社のルクオイルとなっている。英BPの統計によれば、ロシアは原油で世界3位、天然ガスで世界2位の産出国であり、資源部門が大きな影響力を持っている。
次に、国家部門の支配度が高い。トップ10社のうち、半数以上が国営企業である。ツートップのガスプロムとロスネフチは国営企業。また、第4位のロシア最大手銀行ズベルバンクと、外国貿易銀行を前身とする第8位のVTB銀行はいずれも国営銀行である。さらに、第6位に位置する兵器輸出が中核の国策企業ロステクや、第9位の原子力企業ロスアトムなど、重要産業を国営企業が担っている。
500社全体でみると、数の上では民間企業のほうが多いが、総売上高で見ると国営企業の支配度が高い。例えば、20年版ランキングによると、500社のうち81社の国有企業が、500社の総売上高の41%を占めていた。なお、トップ500社の総売上高は、ロシアのGDP(国内総生産)の約8割に相当する。ランキングの順位変化も少なく、上位5位はRBC500のランク付けが始まった15年から6年続けて同じ顔ぶれである。
個人制裁の対象に
ロシア経済で圧倒的な存在感を示すこうした大企業の多くは、オリガルヒと呼ばれる人々に率いられている。1991年のソ連崩壊後、エリツィン大統領期のロシアにおける資本主義化の過程で、政権との公式・非公式な強い結び付きのもと、企業を率いて新興財閥の総帥となった「政商」たちである。象徴的なのは、90年代半ばのエリツィン時代の「オリガルヒ7人組」である。
オリガルヒ7人組はかつて、ロシア経済の約半分を支配しているとまでいわれた。その後、7人のうち、プーチン大統領と対立した3人は表舞台から去り、2人はプーチン時代になっても実業界で活躍してい…
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週刊エコノミスト
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