週刊エコノミスト Online 戦時日本経済
《戦時日本経済》インバウンドは、今年年末以降に期待=美和卓
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輸出 供給制約と経済安保が資本財の需要を高める=美和卓
2021年の日本経済は、停滞色の強い展開となった。21年の実質GDP(国内総生産)は、前年比1・6%増(21年10~12月期2次速報ベース)と、前年の同4・5%減からの反発としては小幅にとどまった。繰り返された新型コロナウイルス(コロナ)感染の流行が成長停滞の主因とみなされることが多いが、21年央を中心に生じた輸出の減速も、重要な原因であった。
貿易統計ベースの実質輸出は、21年7~9月期に前期比3・3%減少した。半導体不足などの供給制約に起因する減産の影響を受けた自動車輸出が同18・4%減と大きく落ち込んだ。日本経済がコロナ禍から本格回復するカギは、国内での感染抑制だけでなく、供給制約の影響から輸出が立ち直ることにもあるといえる。
供給制約解消後に期待
22年1~3月期に入っても国内自動車メーカーが、追加減産を実施している。同1月鉱工業生産では、自動車工業が前月比17・2%減の落ち込みを記録した。同1~3月期の実質輸出は、再び供給制約の影響により下押しされる公算が大きい。
自動車以外の部分での供給制約には、解消の動きもみられる。年明け後の国内生産は、自動車を除けば供給制約の震源地でもある電気・情報通信機械工業も含め持ち直し方向であった。1月製造工業生産予測調査によれば、22年1~3月期は電子部品・デバイス工業(前期比7・9%増)、電気機械工業(同2・4%増)、生産用機械工業(同0・5%増)などが増産となる見込みである(前期比増減率は、野村証券による実現率・予測修正率調整後の計数)。今後、自動車工業における供給制約も徐々に解消に向かっていく方向にはあると判断される。
経済活動再開で先行した米欧では、ペントアップ(繰り越し)需要が一巡し、今後、日本の輸出をけん引する力は弱まる恐れもある。これまでの供給制約に伴う未充足需要に対応した在庫積み増しの動きなどにより、特に米国の輸入は、高めの伸びを続ける可能性がある。ペントアップ需要一巡による経済全体の成長鈍化の下でも、日本の輸出は堅調に拡大することが期待できる。深刻な供給制約を経験したことによる生産能力増強意欲の高まりや、経済安全保障体制構築を背景とした供給網強化の取り組みがグローバルに加速することによって、特に、日本の資本財輸出に対する需要が押し上げられる可能性もある。供給制約解消後の輸出の回復は、力強いものになると予想する。
インバウンドは後ずれ
定義上サービスを含むGDPベースの輸出回復にとっては、インバウンド(訪日客)受け入れ再開も鍵となる。
野村では、現下の日本政府の保守的な水際対策と、5月連休明け再開、11月末終了と想定するGoToトラベルキャンペーン実施時の国内旅行者による供給逼迫(ひっぱく)の可能性を勘案すると、インバウンド受け入れ再開時期は12月以降になると見込んでいる。再開時期は遅れる恐れがあるが、インバウンド観光への潜在需要は大きく、再開後には訪日外国人による需要がGDPベースの輸出の押し上げ要因として大きく寄与しうると考える。訪日外国人数…
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