週刊エコノミスト Online 戦時日本経済
《戦時日本経済》消費 そごう・西武が象徴する中流没落=河野圭祐
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セブン&アイ・ホールディングス(HD)がそごう・西武の売却に動いたことは、百貨店業界全体の苦境を象徴する出来事だった。
2000年代には、そごうと西武百貨店の経営統合(03年6月)が号砲となり、J.フロントリテイリング(07年9月、大丸と松坂屋)、エイチ・ツー・オーリテイリング(07年10月、H2Oリテイリング、阪急百貨店と阪神百貨店)、三越伊勢丹HD(08年4月)と、百貨店連合が相次いで誕生した。しかし、現在は百貨店企業同士の合併や統合は望むべくもない。業界の地盤沈下が続いていることがその要因だ。主力商品である衣料品の売り上げは、1991年の3.9兆円からコロナ禍以前の19年に1.7兆円へと半分以下に減少。コロナ禍に襲われた20年には91年比で7割減の1.1兆円に落ち込んだ。
どの百貨店も本店や「準本店」などの基幹店舗こそ収益は踏みとどまっているが、閉鎖した地方店や郊外店は数多い。06年から19年にかけて全国の百貨店数は69減少し、そのうち10大都市(東京23区、大阪市など)以外での閉店が55に上る。ここにコロナが追い打ちとなり、20~21年にかけて16店舗が閉店に追い込まれた。いずれも10大都市以外の立地だ。
ファンドは不動産狙い
06年6月にそごう・西武(当時はミレニアムリテイリング)を買収したセブン&アイは、今回の売却の前段として、H2Oリテイリングに関西3店舗(西武高槻店、そごう神戸店、そごう西神店)をセットで売却するもくろみだった。だが、交渉の結果、売却は西武高槻とそごう神戸の2店となり、郊外立地のそごう西神はH2Oが見送った。同店は20年8月閉店し、ショッピングセンター(建物は神戸市所有)に業態転換している。H2Oとすれば、阪神三宮駅と直結するそごう神戸店(現・阪急神戸店)だけ欲しかったというのが本音だっただろう。
セブン&アイは、かつてのセゾングループのように百貨店からスーパー、コンビニ、専門店までを擁する総合小売り集団を目指したが、結果的に百貨店の再建は諦めた格好だ。そごう・西武の買い手はファンドに落ち着きそうだが、狙いは小売業ではなく、不動産価値を基…
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