《世界経済入門》金利は米国で緩やかに上昇も日本は低水準、ウクライナ情勢次第では低下リスクも=丹治倫敦
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世界経済入門 何が起きるか7 長期金利 米国で年末2%超、日本0・1% ウクライナ深刻化で低下リスク
金利は「貨幣(お金)の価格」といわれる。というのも、金利は「お金の借り手の意欲」の強弱に影響を与えるからである。つまり、金利が低ければ借り手はより低いコストでお金を借りられるため、借り入れの意欲が上昇し、金利が高ければ逆に低下する。
借り入れの意欲が上昇することは、お金を借りて設備投資をする企業や、ローンを組んで住宅や車などを購入する個人の増加につながる。よって景気拡大や物価の上昇(インフレ)は、金利が低いほど起こりやすく、逆に金利が高いほど沈静化しやすい。
景気の悪化は失業率の上昇などにつながる一方で、必要以上の景気の過熱もバブルを生む恐れがあるほか、物価の急激な上昇も国民生活に悪影響を与え得る。よって、金利は高すぎても低すぎても弊害がある。そこで、経済を適切に導くため、金利をコントロールする役割を担う機関が、日銀や米連邦準備制度理事会(FRB)といった中央銀行である。中央銀行は1日といった極めて短い期間の金利をコントロールする。
金利は同じ通貨でも、資金の借り手や期間によって水準が異なる。同じ借り手について、期間を横軸、金利を縦軸に並べたグラフを「イールドカーブ」(利回り曲線)と呼ぶ。イールドカーブは、市場の景気、物価に対する見通しを測るための重要な物差しだ。
資金の借り手については、通常は最も信用力が高いとみられる国債のイールドカーブがその通貨の金利の指標とされる。
国債には償還期限が1年以内の短期から30年の超長期までさまざまな種類がある。国債の金利は市場メカニズムを通じて決定されるが、その際に大きく影響するのが、中銀が誘導する「短期金利」(政策金利)の市場予測である。例えば10年国債利回り(10年金利)であれば、市場の予測する今後10年間の政策金利の平均的な水準を反映すると考えられる。特に近い将来は具体的に予想しやすいため、5年以下程度の金利は市場の政策金利予測を精細に反映させやすい。
10年程度の長期金利は、詳細な予測が困難な遠い将来の予想を含むため、長期的に見た平均的な金利水準の予想も反映する。これは、その国の経済の平均的な「成長率」や「物価上昇率(インフレ率)」と連動しやすい。また、財政赤字拡大に伴う国債の増発など、国債独自の需給の変化にも影響を受ける。
近年では中銀が市中から国債を購入することで、長期金利を直接コントロールする場合もある。例えば日銀は、政策金利に加えて長期金利にも政策目標を設定している(イールドカーブ・コントロール)。
全般的に「景気が良く物価が上昇するほど、中銀がそれを抑制するために利上げをする」という見通しから、中期〜長期金利は上昇しやすく、景気が悪く物価が下落するほど、逆に利下げの見通しから中期〜長期金利は低下しやすい。このため、長期金利は「経済の体温」と呼ばれる。
米金利は緩慢な上昇
過去の金利動向を見ると、数年〜十数年単位の長いスパンでは、世界的に成長率や物価上昇率の低下が進んだため、それに合わせて先進各国の長期…
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週刊エコノミスト
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