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建て替えだけじゃない! マンション老朽化に対処する第三の方法=別所毅謙

改正建て替え円滑化法 要件緩和も容積率がハードルに 既存物件の「長寿命化」に活路=別所毅謙

 2020年に成立した改正マンション建て替え円滑化法(建て替え円滑化法)が今年4月1日に施行された。マンションは戸建て住宅と違い、区分所有者がそれぞれの住居のオーナーであり、その権利に対する認識は大きく違う。そのため、建物が古くなったり、耐震性で問題があっても、一部の住人の反対で、建て替えが進まない場合がある。そこで、区分所有法による建て替え手続きとは別に、区分所有者が「建て替え組合」を作り、多数決でスムーズに建て替えを進めるため、02年にマンション建て替え円滑化法が制定された。

 11年の改正では対象住戸規模が緩和され、14年の改正では耐震性が不足し「要除却認定」がされたマンションについて、建て替え後の建物の容積率緩和が認められたほか、区分所有者の5分の4の賛成で建物と敷地が一括で開発業者などに売却できる「敷地売却制度」が創設されるなど、少しずつ使い勝手が改善されている。

 今回の4月の改正で大きく変わる点は、耐震以外にも「外壁の劣化、火災に対する安全性の不足」等も理由に「要除却認定」できるようになったこと、また、「団地の敷地分割事業」が新設されたことだ(表)。後者は、広大な敷地に複数の棟が建つ団地型のマンションで、一部の街区の棟で耐震性が不足していたり、外壁が劣化していたりした場合、団地住人の5分の4以上の賛成で、一部の街区の敷地を売却したり、棟の建て替えができるようにしたものだ。

 容積率の緩和を受けられれば、今まで建てられなかった大きさ、高さの建物を建てられるから、増えた住戸を売却して、建て替え資金に充当することができる。また、敷地の一部を売却できれば、同様に、建て替えの資金に使えることになる。

 しかし、実際には容積率の緩和の条件は厳しく、公開空地や緑地面積、はたまた防災倉庫の設置などを求められる。さらに、日影による高さ制限などは撤廃されないため、「高い建物を建てて世帯数を増やす」ということはほぼ不可能だ。

旧耐震が築40年に

 マンションの平均戸数は東京で53戸ほど。実際には1000戸を超えるようなマンションも存在するため、中央値は40戸程度と言われている。大型ではないマンションがほとんどだ。敷地の一部売却で建て替え資金を捻出しようと思っても、古い団地型や敷地に余裕があるマンション以外は難しい。

 今年、ちょうど旧耐震基準で建設された最後のマンションが、築40年を迎える。旧耐震のマンションは103万戸ある。これがあと10年たつと、築40年のマンションは240万戸ほどに増える。マンションは、古くなってくると、見た目の劣化のほか、設備の陳腐化や、給排水管の劣化、躯体(くたい)の劣化が進行。現在の耐震基準を満たしていない建物は、大地震などの際に近隣の建物を巻き込んでの倒壊などが予想される。

 だが、おそらく、ほとんどのマンションが建て替えのために敷地を売却できるような余裕もないし、建て替えで高さを増やすにも、容積率の緩和はハードルが高い。つまり、建て替えを円滑化するためにいろいろと条件を緩和しているが、実際に存在する築40年以上の分譲マンションの多くには当てはまらないことが予想される。

 私がコンサルタントとしてかかわっているマンションで、実際に建て替えをしようと検討しているマンションがある。約60戸の規模だが、建て替えの専門家に聞いたところ、日影制限や容積率の関係で、現在だと「戻り率」が60%ほどしかないことが判明した。つまり、建て替え前は10階建てのマンションが、建…

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