経済・企業

《危ない円安》18世紀のオランダに学ぶ国債の安定=平山賢一

経常赤字 私はこう考える3 18世紀オランダに学ぶ「国債の安定」=平山賢一

 日本では、原油などのコモディティー価格の急上昇の影響もあって貿易赤字が急拡大し、年初の経常収支が赤字化していた。これまでも貿易収支が赤字に転じることはあった。それでも企業が海外投資から得る膨大な配当金や利子による第1次所得収支の黒字を上回るケースはほとんどなかっただけに、今回の経常赤字は衝撃をもって受け止められているといえよう。しかし、経常黒字が長期にわたり続いていたという事実こそが、類いまれな出来事であったと考えるべきかもしれない。

 そこで、日本の経済状況のように経常黒字が続いた史実を探ってみると、意外なことに18世紀のオランダに見いだせる。当時の国債利回りは、2〜3%という歴史的低水準で超長期にわたり安定していたという。オランダは、スペイン衰退とともに凋落(ちょうらく)するイタリアの諸都市群の経済力低下を横目に、交易で相対的に優位な立場を得た。欧州における交易のハブの地位を利用し、貿易黒字を積み重ねることで信用力も高めた。金融業でも頭角を現し、経常黒字国としての地位を確立したのだ。

 こうした中で興味深いのは、交易による富の蓄積が、一部の富裕層だけでなく、一般大衆にまで広く行き渡っていた点。その広く、薄く行き渡った富は、オランダ人の持つ倹約志向も手伝い、資産運用手段としての年金公債(年金の形式で利子と元金の一部を支払うことを条件にして募集する国債の一種)に向かい、政府の財政を支えることに貢献した。一般大衆の資金は、じっくりと投資される傾向があったために、安定的に国債を消化するには好都合だ。そしてオランダの場合、国債利回りの安定に成功したのであった。

 また当時のオランダでは、政治と経済が融合して官民一体となった政策運営がなされており、予算管理の健全性が保たれていた。そのため、デフォルト(債務不履行)…

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週刊エコノミスト

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