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《ウクライナ戦争で知る歴史・経済・文学》国連は何ができるか 大国による侵略で安保理が見せた限界=山田哲也

ウクライナ侵略への非難決議は総会緊急特別会合にて採択された Johr Lamparski/Nurphoto/共同
ウクライナ侵略への非難決議は総会緊急特別会合にて採択された Johr Lamparski/Nurphoto/共同

歴史・経済・文学 国連は何ができるか 大国による侵略で安保理が見せた限界=山田哲也 

 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は、世界に衝撃を与えた。報じられている非人道的行為を見ると、暗たんたる思いと怒りしか浮かばない。

 停戦・和平の見通しも立っていない。仮に停戦が成立したとしても、その後にどのような安全保障の枠組みが構築されるのかも定かではない。他方、今回の侵略によって、「国際連合(国連)を通じた安全保障」という、1945年以降の国際秩序(の一部)を担ってきた「仕組み」はやはり機能しないことが明らかになった。

 そもそも国連の安全保障とは何か。なぜ国連は機能しないのか、和平後に国連は何らかの役割を取り戻せるのか。

大国が背負う「責任」

 国連が2度の世界大戦への反省の上に設立されたことは、憲章前文からも明らかである。第二次世界大戦は、日本・イタリア・ドイツによる侵略がきっかけであると認識されている。憲章1条1項が「侵略行為の鎮圧」を国連の目的に掲げ、前提として武力による威嚇や行使を禁止した(2条4項)のも、武力による現状変更を二度と許さないという決意の表れである。

 一方、ウクライナ侵略開始翌日の安全保障理事会(安保理)に提出された、侵略行為を非難し、即時撤兵などを求める決議案は、ロシア自身の反対(いわゆる「拒否権」)によって否決された。その後に招集された総会緊急特別会合では、賛成141、反対5、棄権35で非難決議が採択された(3月2日)が、この決議は勧告であり拘束力はない。

 安保理の拒否権は、常任理事国(米国・英国・フランス・ロシア・中国のいわゆる「5大国」)にのみ認められ、5大国のいずれかが反対すれば、安保理は決議を採択できない。なぜ、5大国には、そのような特権的地位が認められているのであろうか。

 一つは、第二次世界大戦後の国際秩序の維持において5大国が「主要な責任」(24条1項)を負う、という決意に基づくという理解である。ロシアの行動が非難されるのは、ロシアが国際社会全体に対して負っている責任をあからさまに放棄したからに他ならない。他方、5大国は、自らが安保理で非難されたり、憲章に基づく制裁措置の対象となったりすることを阻止できるようにしてある。

 もし拒否権がなければ、憲章上は、ロシアへの武力制裁も可能となる。しかし、これでは結果的に大国同士を巻き込んだ大規模な世界大戦になることは、誰の目にも明らかであろう。今回のような事態に安保理は対処できないよう最初から制度設計されているのだ。

 そもそも、安保理内部の不協和音は今に始まったことではない。北朝鮮の核・ミサイル開発にせよ、シリア内戦にせよ、そして14年のクリミア併合にせよ、安保理は本来の役割を果たせていない。4分の3世紀を超えた国連の歴史の中で、安保理が一定の役割を果たしたとされるのは、冷戦直後の90…

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