自治体主導で復活期す英国の空港 海外ファンドと協力する事例も=野村宗訓
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世界の航空業界がコロナ禍前の状態に戻るのは2024年以降になるとみられる。世界の主要航空会社は減便や路線撤退を進めてきたが、破綻したケースもある。空港の経営も厳しさを増しており、地方空港は深刻な経営難にあえいでいる。
こうした中、英国の地方空港が注目すべき取り組みを行っている。近年、危機克服のためにファンド会社や自治体による所有が増え、共有することで生き残りを図るところも見られる。
1000万人超増やす目標
英国の20年の旅客数は19年比で70~75%の減少となった。主要空港トップ20の利用者は表の通り、19年の約25%にすぎない。
しかし、いずれの空港も複数エアラインが就航し、路線数が多いことから、早晩、回復できるものと期待されている。理由の一つは、英国の空港では欧州連合(EU)路線の利用者が依然として高い比率を占めているからだ。
もう一つは、民営化後の転売プロセスで多数の空港にファンド企業が出資している点があげられる。加えて、部分的に自治体が関与する空港も増えている。つまり民間企業が単独で運営するのではなく、自治体の協力を得ながら地域活性化を狙って空港改革を進めているのが大きな特徴だ。
最も注目すべき戦略を打ち出しているのは首都ロンドンの北、約50キロに位置するルートン市である。同市は空港の株式売却による民営化ではなく、運営権を民間企業に譲渡する「コンセッション」に基づく民営化を選択した唯一の空港である。21年11月には「ルートン・ライジング(LR)」という新しい組織名を使い、空港経営に3年間で4500万ポンド(約74億円)を投入することを発表した。
ルートン空港は、コロナ前の年間旅客数1800万人に対し、39年に2700万人、43年には3200万人と、1400万人も増やそうという計画である。25~27年の第1段階では現在のターミナル1の拡張、33~40年の第2段階ではターミナル2の新増設が盛り込まれている。
コンセッション後は通常、所有者は日々の経営に関与することはないが、コロナ収束が不透明で事業主体の経営状況が悪化しているため、ルートン市が財務的な救済策に踏み切る決断をした。4500万ポンドは将来への投資に向けた支援という位置付けだ。
現在、ルートン空港の運営権はスペインの空港会社アエナ(51%)と豪ファンドAMPキャピタル(49%)が保有する。後者はニューカッスル(49%)とリーズ・ブラッドフォード(100%)の他、豪でも複数空港に出資している。
昨年、LRを通してルートン市が一時金を提供することと引き換えに、契約期間は31年3月から32年8月に延長さ…
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週刊エコノミスト
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