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《相続&登記》2年後に義務化 相続登記すべきこれだけの理由=増尾知恵

実家の相続にも注意が必要だ
実家の相続にも注意が必要だ

 2024年4月1日、改正不動産登記法が施行され、相続登記の申請が義務化される。相続や遺贈により、不動産を取得した相続人は、所定の期間(3年)内に、相続登記を申請しなければならない。正当な理由がないのに申請をしなかった場合には、10万円以下の過料に処せられることになるため、注意する必要がある。

 改正された背景には、所有者不明土地、すなわち不動産登記簿を見ても、誰が所有者かが分からない土地、および所有者が判明していても、その所在が分からない土地が多く存在することにある。

 17年度の国土交通省の調査によれば、所有者不明土地は全体の22%を占め、その原因としては相続登記未了が66%、住所変更登記未了が34%であった。これまで相続登記は義務ではなかったため、登記をしなくてもさしあたり特段の不利益も被らない相続人は、登記費用をかけたくないという理由で、相続登記を行わないことが多かったのである。

 しかし、所有者不明土地が存在すると、必要にかられた関係者が所有者を探索するために時間と費用をかけて戸籍や住民票などを調査する必要がある。そのうえ、不動産が管理されずに放置されて近隣へ悪影響が発生する、不動産取引や公共事業が進まないといった多くの問題が生じる。この喫緊の課題を解決する一方策として、相続登記が義務化されることとなった。

放置で相続人60人超

 相続登記がなされないまま何年も経過した後に、「そろそろ名義変更をしたい」と専門家に相談する事例はよくみられる。きっかけは「何代も前の先祖の名前のままにしておくわけにはいかない」というものから「不動産を売りたいが、名義変更をしなければ売れないと言われた」「不動産を担保に融資を受けようとしたら、銀行から名義変更が必要だと言われた」といった必要にかられたものまで、さまざまである。

 実際に筆者が扱ったケースで、いざ相続人の調査をしたら、60人を超える相続人の存在が判明したこともある。そのケースは、3代以上の相続が発生しており、相続人同士が顔も名前も住所も知らないのは当然のこと、海外在住の相続人がいる、戸籍で追えない相続人がおり、失踪宣告の申し立てが必要になる可能性があるなど、問題が山積していた。

 戸籍で追えない相続人については、戸籍の記載漏れが判明して事なきを得た。また、幸運なことに海外在住者を含めた大半の関係者の協力を得られたが、何人か連絡がつかない関係者がいたため、結局は家庭裁判所を通じた解決を図らざるを得なかった。

 最終的に2年かけて名義変更を完了できたが、依頼者は弁護士費用や司法書士費用(登録免許税も含む)の他に、郵便代、戸籍などの取得費用、裁判手数料などだけでも20万円近い費用を負担することとなり、経済的・時間的負担は決して少なくなかった。

 このように相続登記をしないことの代償が、後々の世代の相続人に生じてしまうこともあるため、“可哀そうな相続人”の発生を予防するという観点からも、今回の改正には意義があるといえる。

 改正法はまず、「基本的義務」として、相続や遺贈により不動産を取得した相続人に、自己のために相続が開始したことを知り、かつ不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内の相続登記(法定相続分での登記や、後述する相続人申告登記でも可)を義務付けた(表1)。

 また、いったん法定相続分での相続登記をした後に遺産分割により登記済みの相続分を超えて所有権を取得した相続人や、相続人申告登記をした後に遺産分割により所有権を取得した相続人に対して、遺産分割成立から3年以内にさらに登記を申請する「追加的義務」を定めた(表…

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