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《相続&登記》どうなる生前贈与? 富裕層に「お得」な贈与税を見直し=村田顕吉朗

「生前贈与が使えなくなるって本当ですか?」と納税者から相談を受けることが増えた。昨年ごろからメディアやセミナーなどからの情報を耳にし、不安を感じている納税者は多い。注目を集める相続・贈与課税の一体化について、議論の内容と我々が取るべき対策をまとめる。

 議論の対象となっているのは大きく3点だ。まず贈与税の税率が相続税の税率よりも急激に高くなるように設定されており(図)、贈与しにくくなっていること。個人の金融資産の60%を60歳以上が保有する中で、若年世代への資産移転がなかなか進まない原因の一つがここにある。

 次に、一般的には高額とされる贈与税だが、資産が膨大で最大55%の相続税を課される富裕層にとっては、仮に贈与税で50%を負担したとしても、相続税よりは「お得に」資産を移転できるという点だ。一般家庭にとっては高い贈与税が、富裕層にとっては節税の手法になっている。

「中立的」な制度構築

 最後が、資産移転の時期に「中立的」かどうかという点だ。現行の日本の相続税は、死亡前3年間に行った贈与は相続財産に加算して相続税を課税している。しかし、3年より前(または相続で財産を取得した相続人等以外)に行った贈与には相続税は課税されず、贈与する金額を調整すれば相続税より低い税率での財産移転が可能となっている。

 つまり、財産の総額が同じであっても、財産をいつ移転させるかによって負担する税金が異なっており(もっといえば早めに贈与をするほど相続税負担が減少することになり)、これが「資産移転の時期に中立でない」と考えているのだ。

 このような問題意識が明らかになったのは、2019年度税制改正大綱に「資産移転の時期の選択に中立的な制度を構築する方向で検討を進める」と記載されたのが発端だ。20年度も同様の記載がされた後、21年度では「本格的な検討を進める」と記載が変わった上、政府税制調査会の中里実会長が相続税・贈与税の専門家会合を設置すると発言したことで一気に税制改正が現実味を帯び、大きなニュースとなった。

加算期間3年を延長か

 結局この専門家会合は設置されなかったが、22年度税制改正大綱では「相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない」といった記述が追加されており、今後、制度の見直しの議論が本格化する可能性が高まったと見られている。

 三つの問題点のうち、一番影響が大きいのが「資産移転時期の中立化」、すなわち、贈与の時期を問わず税負担が一定になる「相続・贈与課税の一体化」だ。税制調査会では中立的な例としてアメリカ、ドイツ、フランスを挙げている。アメリカは一生涯分、ドイツは死亡前10年、フランスは死亡前15年分の贈与財産を相続財産に加算している。例えばドイ…

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