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《相続&登記》空き家・空き地の管理・清算に二つの新制度=嶋津保

実家の処分もより柔軟に
実家の処分もより柔軟に

 制度改正によって、相続の仕方がどう変わるのか。改正前と比較しながら解説する。

 相続財産管理人は、相続人全員が相続放棄した場合などの相続人が判明しない場合や、相続開始後の熟慮期間中の場合などに、財産を管理(保存・清算)する役割を果たす。2021年の民法改正(施行は23年4月)により、現行の相続財産管理人は、財産の保存を目的とする相続財産管理人と清算を目的とする相続財産清算人に整理されることとなった(7表)。

 現行の制度ではどのような点に問題があり、改正によってどのような点に対処できるようになったのか、内容を確認してみたい。

現行制度に「切れ目」

 まず、現行法の相続財産管理制度ではどのような問題点があったのだろうか。

 相続開始後、相続人は相続財産を相続するか(単純承認)、相続人となることを放棄するか(相続放棄)、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続するか(限定承認)のいずれかを、原則として3カ月の間(熟慮期間)に選択することとなる。

 3カ月を経過した場合、または相続財産の一部を処分した場合には、単純承認をしたものと扱われるため、相続の多くのケースでは、相続人は単純承認を行うこととなる。

 ところが、現行法では表のとおり、単純承認により、相続人が1人でも存在すると(表の(1))、その保存などを目的とした財産管理制度がそもそも存在せず、遺産分割が紛糾して長期化したり、相続人が高齢であったりして、相続財産を適切に管理できない状態であった場合でも、制度を利用することができなかった。

 また、相続放棄などで、相続人がいなくなった場合(表の(2))、相続財産を管理する者が誰もいなくなってしまうが、現行法では清算を目的とした制度しか存在せず、費用負担が重く、制度を利用するためのハードルが高かった。

 そのため、相続財産となった土地や建物の利用が阻害されることとなり、管理者の不在により荒廃が進み、財産価値が減り、近隣への悪影響が生じることの原因となっていた。

 新制度1 相続財産管理人

 今回の改正では、これらに対処するため、以下のケースのように、相続発生後、遺産分割までの間の各局面や、相続人が不存在になった局面でも保存型の相続財産管理制度を利用することができるようになり、切れ目のない統一的な制度となった。

 ■ケース1

 長年、高齢者施設に入居していた父が死去し、子A・Bが地元にある自宅土地・建物を相続した。既に母は死去しており、相続人はA・Bのみであるが、いずれも地元を遠く離れており、仲が悪く、遺産分割協議も紛糾しているほか、双方とも父の物件の管理には関心がない。

 建物は老朽化しており、土地も雑草が生い茂ってしまっているため、隣地に住む親戚のC(A・Bの叔父)は、父の生前から雑草の除去費用を立て替えるなどして債権を有していたが、父の死去後はA・Bからの連絡もなく、困っている。

 このようなケースでは、現行法は相続人であるA、Bが存在するため、Cは相続財産管理人の選任を申し立てることができず、なすすべがない状況であった。

 今回の改正により、ケース1の場合でも、Cは利害関係人(Cの場…

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