法務・税務

《相続&登記》国税も最高裁も相続ゼロ申告に“待った”をかけた意味=山崎信義

マンションなど不動産を活用した相続税対策は広く行われているが…
マンションなど不動産を活用した相続税対策は広く行われているが…

 最高裁は4月19日、相続した賃貸マンションの評価額について、国税庁の定める「財産評価基本通達」(以下「通達」)の例外規定を適用し、金額を高く再評価したうえで追徴課税した税務署の処分を適法とする判決を言い渡した。1、2審の判断を支持して納税者側の上告を棄却し、納税者側の敗訴が確定したが、期待されていた例外規定を適用する具体的な基準などは示されず、“肩透かし”を食った格好となった。

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 相続税法では不動産や株式などの相続財産を「時価」で評価するとしているが、何をもって「時価」とするかは争いが生じやすい。国税庁の通達はその時価の評価方法を細かく定めており、土地の評価額を算定する際の「路線価」もその一つとして知られている。相続税の実務では一般的に、この通達に沿って財産を評価したうえで、相続税を算出して申告している。

 ただし、通達6項ではその例外として、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当」な場合には、国税側が独自に再評価できると規定している。通達6項はもともと、通達が想定しないような特殊なケースの評価方法を定めたものだが、2015年の相続税増税後、富裕層を中心に相続税の節税対策が広がったこともあり、国税側が通達6項を適用して追徴課税し、過度な節税に“待った”を掛けるケースが増えている。

 しかし、通達6項の適用に際しては、何が「著しく不適当」な場合に当たるのかの基準が明確でなく、納税者側と争いになるケースも同時に増えていた。今回の訴訟もその一つであり、20年6月の東京高裁判決で敗訴した納税者側が上告した後、最高裁が3月15日に弁論を開いたため、通達6項の適用基準の明確化だけでなく、原審の判断が覆る可能性にも注目が集まっていた。

「ゼロ」申告を否認

 今回の訴訟では、12年に94歳で亡くなった被相続人が相続発生の数年前、計約13億8700万円で相次ぎ購入した東京都内などの賃貸マンション2棟の相続税評価額が争点の一つとなった。相続人は路線価など通達の評価方法に沿って2棟を計約3億3370万円と評価したうえで、相続税法の定めに従って賃貸マンション購入にかかる借り入れの残額約10億円を相続財産から差し引くなどした結果、相続財産の課税価格を2826万円、相続税をゼロとして申告した。

 判決によれば、賃貸マンション2棟の購入や借り入れがなければ、相続財産の課税価格は6億円を超えていた。この申告に対し、国税側は通達通りに評価すれば「実質的な租税負担の公平を著しく害する」として通達6項を適用。国税側が不動産鑑定をした結果、賃貸マンション2棟を約12億7300万円と評価したうえで、相続税を約2億4049万円とする更正処分(申告内容を修正する処分)をし、納税者に過少申告加算税も課した。

 最高裁はまず、相続税計算上の財産の評価について、相続税法22条が「相続などにより…

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